今年も東京の高校生はレベルが高い。インターハイ東京都予選は5月10~11日、17~18日と駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で開催される。一番の注目は昨年高校記録の13秒59(-0.7)をマークした110 mHの古賀ジェレミー(東京校3年)だ。故障明けとなるシーズン初戦で、どんなハードリングを見せるだろうか。男子400mと男子走高跳でも複数の全国大会入賞者が登場し、激しい戦いが展開される。投てき種目では男子円盤投の福宮佳潤(東京高2年)も全国大会優勝候補だ。
●古賀ジェレミーは故障明けのシーズン初戦
昨年の古賀の快進撃には目を見張らされた。5月のインターハイ東京予選を14秒05(-2.0)の東京都高校新記録で制すと、6月のインターハイ南関東予選にも13秒91(-0.4)で優勝。8月のインターハイは13秒59(-0.7)と、高校記録を0.10秒更新して優勝した。10月のU18競技会(全国大会)はU20規格(高さ99.1cm。一般規格は106.7cm)のハードルだが、13秒41(+0.5)の高校歴代3位タイで制した。
今年も2月の日本室内U20・60mJHに7秒66で優勝したところまでは順調だったが、3月にリード脚の左ひざを傷め、半月ほど本格的な練習ができなかった。日本室内優勝後には「今季は世界陸上出場と、20年間破られない高校記録を出すことが目標」と話したが、その目標も見直さざるを得なかった。
しかしその後行ったPRP再生治療で徐々に回復し、4月末時点では東京予選には間に合う状態になっている。東京高・小林隆雄監督は「6月の南関東予選、7月の日本選手権までに自己新を出せれば」と期待する。
東京都予選は古賀の屋外シーズン初戦。4月に試合に出場していた1、2年時よりもシーズンへの移行は遅れている。過大な期待はできないが、昨年自身が出した14秒05の大会記録更新ができれば、順調な復帰プロセスを進んでいると見ていいだろう。
この種目は古賀以外にも全国トップレベルの選手がいる。櫛野カリック(明星学園高2年)は、古賀が優勝した昨年のU18大会3位。今年の日本室内はU18・60mJHで優勝した。U20優勝の古賀が7秒72、櫛野が7秒88だった。国民スポーツ大会少年B2位の門田拓磨(東京高2年)も期待されている。古賀の状態次第では接戦になる可能性がある。
●トラック種目では男子400mが全国大会レベルの激戦
短距離では男子400mに有力選手が揃った。
昨年の高校リスト8位(47秒00)に小澤耀平(城西高3年)、9位(47秒08)に熊谷太郎(明大中野高3年)、10位(47秒16)に青木誠也(城東高3年)と東京都選手3人が並んだ。2年生以下のリストでは全国2~4位となる。
昨年の実績では小澤が昨年のインターハイ8位、国民スポーツ大会少年A300m8位と全国大会で入賞してリードしている。熊谷は6月のインターハイ南関東予選で3位。優勝がインターハイ全国大会に優勝する菊田響生(当時法政二高3年)で、2位が小澤、5位が青木だった。青木は秋に躍進し、9月の東京都高校新人で200m(21秒55・-0.6)と400m(47秒16)の2冠。10月のU18競技会300mでは7位に入賞した。
今年の400mは、インターハイ全国大会の前哨戦的な戦いになる。
男子100mは大坂千広(明大中野高3年)が昨年10秒46(+1.6)で走っている。インターハイ東京都予選、南関東予選と続く中で10秒3台を出すことができると、全国大会での入賞が見えてくる。
長距離&競歩種目にも昨年の全国大会入賞者がいる。国民スポーツ大会少年B3000m6位の圓太喜(城西高2年)が、5000mと3000mSCにエントリーした。5000mでは昨年14分12秒03を出している池谷陸斗(駒大高3年)や、東京都高校駅伝1区区間2位の寺内頼(拓大一高3年)らと対決する。3000mSCでは9分10秒前後を出すことができれば、全国大会入賞へのステップになる。
5000mWには昨年のインターハイ7位の井上隼太朗(東京高3年)が出場する。昨年11月にマークした20分36秒57はシーズン高校リスト6位。2年生以下では3番目だった。昨年の東京都予選は22分37秒72。ピークは全国大会に合わせるが、東京都予選で20~21分台前半を出しておけば全国大会に向けて弾みが付く。
●フィールド種目では男子円盤投の福宮が全国大会でも優勝候補
男子円盤投の福宮佳潤(東京高2年)が、全国大会の優勝候補に挙げられている。
昨年のインターハイ路線は砲丸投だけの出場で、南関東予選9位で全国に進めなかった。しかし8月から円盤投に出場し始めると、9月の東京都新人戦に48m97で優勝。この記録は昨シーズンの高校リスト4位というレベル。10月のU18競技会も48m52で、インターハイに2年生以下で唯一入賞した選手に2m差をつけた。
今季も福宮の成長は継続中で、3月末に50m73をマーク。年齢的には通常の選手より1年上になるが、高1歴代2位相当の記録を投げた。4月26日には51m28と高2歴代5位相当まで記録を伸ばした。
東京高の小林監督は「練習では52~53m投げています。全国大会までに55mは投げてほしい」と期待する。
「長身で手脚の長さを生かした投げをする選手です。初速はそこまで出ていないかもしれませんが、滞空時間が長い投げが特徴ですね。昨年はインターハイに出場していませんが、大会を見に福岡に来させました。そこで刺激を受けて、すぐに48mを投げたんです」
東京都予選大会記録の47m31の更新が最低限の目標か。東京高の先輩である安藤夢が持つ東京都高校記録、52m51を更新しても不思議ではない。
男子走高跳には昨年の全国大会入賞者が2人出場する。U18競技会で同順位の7位だった星海成(板橋高2年)と清水怜修(明星学園高2年)である。
清水は23年の全日本中学選手権優勝者。中学時代に2m05と、その年の中学リスト1位を跳んでいたこともあり、昨年は1年生ながらインターハイ路線で結果を出した。5月の東京都予選に2m07で優勝すると、6月の南関東予選も2m04で優勝。全国大会は2m03と、8位選手と同記録で10位に入った。2年生以下では3番目の順位だった。
星は中学時代の記録は1m88で中学リスト21位。インターハイは全国大会まで進んだが、予選を通過することはできなかった。だが10月のU18競技会では2m00で7位に入賞。ベスト記録ではまだ6cmの差があるが、清水と全国大会の順位で並んだことは自信になっただろう。
星は東京都予選でもエントリーしている三段跳や、さらには八種競技など他種目にも積極的に出場している。将来的に大きく成長するための取り組みだろう。
2年生コンビの争いは、2m10以上にバーを上げるかもしれない。
●昨年の3年生が強すぎた女子の期待は?
昨年の東京都予選の女子は、800m以外の全種目を3年生が制した。めったに見られない現象だが、女子短距離3冠のロス瑚花アディア(当時城西高3年)や、走幅跳でインターハイ全国大会に優勝する近藤いおん(当時城西高3年)、七種競技で全国2位になる仮屋愛優(当時東京高3年)ら、全国レベルの選手が揃っていた。
1~2年生の昨年の全国大会入賞者は、国民スポーツ大会少年B100mYHで4位の廣田ひかり(東京高2年)だけかもしれない。廣田は国民スポーツ大会翌週の関東高校選抜新人に13秒94(+0.4)で優勝した。島野真生(日女体大院)が持つ13秒79の大会記録が目標になる。島野は東京高の先輩で、今年13秒04(+1.8)の学生新を出した選手である。
2年生では走幅跳の川端梨聖(東京高2年)も期待できる。昨年のインターハイは予選を通過できなかったが、今年2月の日本室内U18では5位に入賞した。ただ、自己記録が5m74にとどまっている。昨年の1年生間では全国2位の記録だが、今年全国入賞をするには東京都予選で自己新を出し、南関東予選、全国大会とさらに記録を伸ばしていきたい。
強力な新入生が多いことが明るい材料だ。その筆頭が国民スポーツ大会少年B円盤投で、中学生ながら高校生を抑えて優勝した平井心(東京高1年)だ。U16競技会でも優勝した。今年は4月に41m20と、国民スポーツ大会優勝記録の39m68を上回った。
100mの吉永ひまり(明星学園高1年)は昨年の全日本中学選手権5位の選手で、4月には11秒97(+0.1)と早くも自己記録を更新した。昨年2位のケリー瑛梨花(東京高3年)、今年の東京選手権優勝の松田冴(慶應女高3年)ら3年生たちに挑む。
走高跳の谷口天音(白梅学園高1年)も、昨年1m65と中学リスト5位タイの記録を持つ期待の選手。3月末に1m66と自己新を出している。
今年の頑張り次第で東京都の来季の女子は、昨年に劣らない強力メンバーになる。インターハイ東京都予選が、そのスタートとなるか。