【東京選手権2025レポート③】

女子100mは高校生の松田が優勝。中学生、社会人、大学生が続き、幅広い年齢層が参加する東京選手権らしいレースに

 東京選手権は4月2527日に駒沢オリンピック公園総合運動場で行われた。大会2日目の女子100mは松田冴(慶應女高3年)が1232-2.0)で優勝。中学生の新井凛生(ペンタスAC)が1242で2位、社会人ルーキーの佐藤瑠歩(大松運輸)が1248で3位、大学生の小松崎妃紅(常磐大1年)が1248の同タイムで4位に続いた。幅広い年齢層の選手が活躍する東京選手権らしさが現れた種目になった。

●スタートダッシュが特徴の高校生

 優勝した松田は、スタートダッシュの速さを武器としている。今大会でもスタートで体1つ、リードを奪って逃げ切った。

「高校1年の時にスタートを、浮かない動きに改良しました。昨年までは上手くいかないことも多くて、ちょっとリードしても後半で抜かれることも多かったんです。今年はスタートでしっかり出て、そのリードを後半も保つことができるようになってきました」

 昨年の東京選手権は8位。インターハイ路線は南関東予選の準決勝止まりだった。しかし中学時代には、全日中で7位に入賞している。

「今年は11秒8台で走ることが目標です」

 東京選手権では向かい風が2.0mと強かった中で1232だった。適度な追い風なら11秒台は出ていたかもしれない。さらに、スタート直後に「つまずいた」ミスもあった。11秒7台の可能性も感じられた。

●中学2年生は複数種目を行うプラン

 新井は昨年の全日中女子100mで、1年生ながら6位に入賞した期待の選手。松田とは対照的に後半で強さを発揮する。

「予選はスタートですごく遅れてしまいましたが、それは想定していたので、後半も冷静に走ることができました。決勝のアップでスタートを水平に出られるように改善できて、後半も落ち着いて走ることができました」

 昨年の全日中では1、2年生中最高順位だった。全国タイトルも狙えるわけだが、目の前の勝負に勝つことよりも、将来的なノビシロを大きくしようとしている。

「四種競技(100mMH、走高跳、砲丸投、200m)にも出場します。色んな種目を経験して、いいところを短距離につなげて、結果的に速くなればいいかな、と思っています。記録的には今年、11秒台を出したいです」

 目標タイムとしては控えめな数字だが、数年後に大きく伸びたい、という気持ちの裏返しだろう。

●例年よりもピークを遅くしている実業団ルーキー

 実業団ルーキーの佐藤も後半型の選手で、スタートで出後れたが後半で追い上げ、小松崎と同タイムだったが競り勝ち3位を確保した。

 昨年の日本選手権100m8位の実績がある。東京選手権を「勝つべき試合」と考えていたが、2カ月ほど「感覚が良くない」ことは自覚していた。負ける可能性もあったが、試合に出場することで現状の確認と、今後の強化方針を考えるヒントを得られる。東京選手権は絶好の試合だった。

「感覚が良くないのは量を意識して練習してきたからで、スピードへの移行が不十分だからだと感じています。学生だった昨年までは5月の関東インカレに合わせてきましたが、今年は7月になった日本選手権に合わせています」

 スタートは不得手としているが、「100mの後半や200mを速く走るには、スタートで流れを作ることはすごく重要です」と、スタートの改善も模索している。

 100mが1175200mは2407が自己記録だが、今季は「11秒6と23秒台」を目標として設定している。東京選手権でも見せた後半の強さからすると、「得意な200m」ではもっと上のタイムが狙えるかもしれない。

 佐藤は法政大を拠点に練習し、同大の苅部俊二監督の指導を引き続き受けている。松田はクラブチームの指導者である大森盛一コーチの指導を受ける。2人は96年アトランタ五輪の4×400mRメンバーで、苅部監督が1走、大森コーチが4走で日本は3分0076のアジア新(当時)で5位に入賞した。

 新井の両親は父親が100mと200m、母親は走高跳で学生時代に全国トップレベルで活躍した。

 選手の年代が幅広いことに加え、家族や指導者など人のつながりも、結果に現れた東京選手権女子100mだった。

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