【東京選手権2025展望】

パリ五輪の濱西、ブダペスト世界陸上の齋藤ら代表経験選手がエントリー。中高生からベテランまで多彩な選手たちが駒沢に集結

東京選手権は4月25~27日に、駒沢オリンピック公園総合運動場で男女34種目が行われる(男女ハンマー投は国士舘大学で実施)。男子5000m競歩には濱西諒(サンベルクス)、女子円盤投には齋藤真希(太平電業)と、近年の五輪&世界陸上代表選手がエントリーした。日本トップレベルの選手だけでなく、高校生、中学生の有望選手、さらにはベテラン選手も多く出場する。年齢も実績も異なる選手たちが集う東京選手権の、今年の見どころを紹介する。

●女子円盤投に齋藤真希ら日本選手権入賞者4人
 自身も砲丸投選手として活躍した東京陸協の呑口健強化委員長は、「一番注目している種目」として女子円盤投(26日実施)を挙げた。昨年の日本選手権2位の齋藤真希(太平電業)、3位の川口紅音、4位の辻川美乃利(内田洋行AC)、7位の藤森夏美(STAC)と、入賞者4人が出場する。
 特に期待が大きいのは齋藤で、23年にはブダペスト世界陸上、アジア選手権(4位)、ワールドユニバーシティゲームズ(8位)と国際大会に出場。今年9月開催の東京2025世界陸上女子円盤投の出場選手枠は36人だが、4月18日時点のRoad to Tokyo2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)で齋藤は出場圏内の31位につけている。
 記録的にも昨年、齋藤は58m47と日本歴代3位をマークした。今年も4月20日の兵庫リレーカーニバルでは57m65と好調。日本記録(60m72)に迫る可能性もある。
 川口と辻川も負けていられない。川口は54m05(22年)の前東京都記録保持者で、辻川は東京選手権で3年連続優勝している。
 東海大大学院を卒業した齋藤が、今季から実業団選手となって東京登録になった。齋藤の社会人選手としてのスタートと同時に、“東京の先輩”である川口と辻川の戦いぶりも注目される。
 男女の混成競技も日本選手権レベルの戦いになる。
 男子十種競技(25・26日実施)には奥田啓祐、森口諒也(オリコ)、右代啓欣(エントリー)、前川斉幸(ひまわりネットワーク)と、昨年の日本選手権2~5位の4人と、日本歴代9位の7764点を持つ田上駿(東京陸協)がエントリーしている。
 奥田は22年に日本人3人目の8000点台となる8008点(現日本歴代4位)をマークした選手。3年ぶりの8000点台を期待したい。
 女子七種競技(26・27日実施)では熱田心(岡山陸協)とヘンプヒル恵(アトレ)、昨年の日本選手権1、2位選手が激突する。勢いのある熱田が6000点に迫るのか、日本歴代3位の5907点を持つヘンプヒルが復調するのか。
 昨年の日本選手権5~7位の大玉華鈴(日体大SMG)、田中友梨(スズキ)、梶木菜々香(ノジマT&FC)も5500点以上の自己記録を持ち、2強に迫る可能性が十分ある。


●高校生、中学生の注目選手は?
 高校生の注目選手として、呑口強化委員長は男子400m(26日実施)の青木誠也(城東高3年)を、中学生では女子100m(26日実施)の新井凛生(ペンタスAC) を挙げた。
 青木は昨年、U18競技会300mで全国7位の戦績を残し、東京都新人対校選手権では200mと400mの2冠。新人戦の400mでマークした47秒16は24年の高校リスト10位、2年生以下では4位のタイムだった。
 この種目の優勝は井上大地(大松運輸)、野口航平(LEGALIS)、野々山開(Accel TC)ら、46秒台の資格記録(24年1月1日から25年3月21日までに出した記録)を持つ社会人選手たちで争われるだろう。彼らに食い下がることで、青木が46秒台中盤まで記録を伸ばす可能性は十分ある。インターハイの優勝を狙える記録が、東京選手権で生まれるかもしれない。
 青木は200m(27日実施)にも出場するが、21秒48の資格記録は参加選手中トップ。同じ開催日の日本学生個人選手権を回避した学生選手や、高校1年生の注目選手である増田陽太(八王子高1年)と対決する。
 増田も昨年のU16競技会150m4位と、全国大会入賞の実績を持つ。100mの10秒67は昨年の中学リスト6位、200mの21秒84は中学リスト4位だった。有望高校生2人の対決が注目される。
 中学生は出場選手数が少ないが、新井凛生の資格記録12秒04は出場選手中3番目。昨年の全日本中学選手権では1年生ながら6位に入賞と、年上の選手たちの中でも力を発揮した。11秒75の自己記録を持ち、昨年の日本選手権8位入賞の佐藤瑠歩(大松運輸)の優位は動かないが、その佐藤と接戦を展開すれば新井は自信を持てる。全日中など年代別の全国大会で、上位進出への足がかりになるのではないか。


●過去の日本代表、全国タイトル経験選手たちが多数出場
 五輪&世界陸上代表経験選手は、女子円盤投の齋藤だけではない。男子100mの大瀬戸一馬(ROOTS TOKYO)と男子5000m競歩の濱西諒がそうで、特に濱西は昨年のパリ五輪20km競歩18位と世界で戦ったばかり。今年2月の日本選手権20km競歩では4位と敗れ、東京2025世界陸上代表は逃している。東京選手権を再スタートと位置付けての出場だろう。
 日本競歩は近年、世界トップレベルに成長した。濱西もその流れに乗っている。5000m競歩の自己記録18分16秒97は日本記録であり、世界歴代でも12位。世界トップレベルの歩くスピードを、駒沢で目の当たりにできる。
 過去に全国大会で優勝経験を持つ選手も多数エントリーした。
 男子では400mの井上大地、砲丸投の村上輝(日本体育施設)、円盤投の米沢茂友樹(オリコ)と安藤夢(みはる矯正AC)。女子では200mの広沢真愛(J.VIC)、400mの高島咲季(わらべや日洋)、400mHの伊藤明子(セレスポ)、走高跳の仲野春花(ニッパツ)、走幅跳の嶺村優(オリコ)、やり投の奈良岡翠蘭(青森県庁)らだ。
 以前より記録が落ちている選手もいるが、東京選手権は再浮上のきっかけにしやすい大会である。全国トップと言えないまでも、ある程度高いレベルの選手が集まるのが東京選手権だ。その中で戦うことが、自身の課題に取り組む良い機会になる。
 女子三段跳の筆野友里(TACC)のように、出産を経て復帰し、30歳代半ばでも12m以上を跳ぶベテラン選手も参加する。選手たちの生き様が、リザルツの行間ににじみ出る大会と言えるだろう。

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