今年の陸上競技日本一を決める日本選手権は6月12~14日、名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムで男女34種目が行われる。一番の焦点は9月に同じパロマ瑞穂スタジアムで開催される名古屋2026アジア大会の代表選考会という点だ。アジア大会には五輪&世界陸上のような参加標準記録はないが、日本陸連が派遣設定記録を定め、その記録を突破している日本選手権優勝者は代表に内定する。代表争いに加わりそうな東京陸協登録選手と東京の高校出身選手を、日付毎に紹介していく。
●今季状態が上がっていない日本記録保持者2人
3日目も男子砲丸投の奥村仁志(センコー)、女子三段跳の森本麻里子(オリコ)と、東京陸協登録の日本記録保持者2人が出場する。
奥村は日本人唯一の19mプッターで、24年に19m09を、昨年も19m08を投げているが、この種目のアジア大会派遣設定記録は20m27と高い。代表入りは日本選手権で優勝し、あとは他種目との比較で選考されることを待つことになる。
森本は14m16(+0.7)の日本記録を23年の日本選手権で樹立。現役選手では唯一の14mジャンパーで、セカンド記録も14m06(±0)を持つ。24年パリ五輪と23・25年の世界陸上にも出場した。アジア大会派遣設定記録は13m86。現時点で突破選手はいないが、複数選手にチャンスがある。
だが今季は奥村、森本とも苦しんでいる。奥村は4月19日の兵庫リレーカーニバルが18m01、5月3日の静岡国際が18m15で連続2位。森本は4戦して13m18(+0.1)がシーズンベストだ。
それぞれの種目で歴代ナンバーワンの実績を持つ2人が、日本選手権から状態を上げていく。
●男子5000mの森、走高跳の坂井が今季好調
男子5000mでは森凪也(Honda)が優勝候補。ゴールデングランプリ3000mで7分38秒98の日本新をマークし、5000mでも13分14秒18の今季日本最高を4月にマークした。5月30日のMDC1500mでは3分36秒53の日本歴代3位で走った。昨年の優勝者でラストに強い井川龍人(旭化成)と、どんな勝負をするかが注目される。
森の他にも男子5000mには東京陸協登録選手の有力選手、注目選手が多い。鶴川正也(GMOインターネットグループ)は社会人1年目の昨年、13分17秒64をマークした。興味深いのはマラソンで実績を持つ選手も参加すること。日本歴代3位記録を持つ池田耀平(Kao)、9月のアジア大会マラソン代表の吉田祐也(GMOインターネットグループ)、学生記録保持者の黒田朝日(GMOインターネットグループ)らが、トラックランナーたちにどんな勝負を挑むのか。
男子走高跳の坂井宏和(センコー)と女子3000mSCの西山未奈美(三井住友海上)も、優勝とアジア大会代表を狙う。坂井は兵庫リレーカーニバルに2m25で優勝しただけでなく、静岡国際も2m24で優勝、GGPも2m23で3位(日本人2位)と安定した戦績を続けている。アジア大会派遣設定記録の2m24も突破済みで、日本選手権に優勝すれば代表に内定する。
西山は昨年の優勝者。アジア大会派遣設定記録の9分37秒26は未突破だが、自己記録の9分39秒28(22年)との差は約2秒。クイーンズ駅伝2区(4.2km)で区間賞を獲得するなど、走力は格段に上がっている。日本記録保持者で昨年の東京世界陸上代表だった齋藤みう(パナソニック)との対決で、派遣設定記録は問題なく破るだろう。
●中島、道下、古賀ら東京の高校出身選手の戦いも要チェック
東京都内の高校出身選手が3日目も多数登場する。城西大城西高出身の中島佑気ジョセフ(富士通)は、男子400mで昨年の東京世界陸上6位入賞。予選で44秒44の日本記録もマークした。世界陸上入賞でアジア大会代表に内定しているが、日本選手権に出場する。その目的を、中島を東洋大時代から指導する梶原道明コーチは以下のように説明した。
「日本選手権のようなしっかりした大会で、昨年と同じ力感、努力感で前半を速く行けるかを試したいと思っています。速くなった時にストライド、ピッチがどう変化しているかを確認したい」
前回優勝者の佐藤風雅(ミズノ)ら、前半の速い選手との位置関係に注目すべきだろう。また、東京陸協登録選手では、前回2位の今泉堅貴(内田洋行AC)も優勝候補の1人で、44秒台も期待されている。
女子1500mでは順天高出身の道下美槻(積水化学)、男子400mHでは桐朋高出身の豊田兼(トヨタ自動車)、女子400mHでは東京高出身の益子芽里(長谷川体育施設)が優勝候補。道下はMDCで4分10秒48と今季日本最高をマーク。アジア大会派遣設定記録の4分07秒68も手が届く範囲に入ってきた。益子は静岡国際で日本人トップの2位。社会人1年目で初タイトルも手が届くところまで成長している。
学生では東京高出身の古賀ジェレミー(順大1年)が男子110mHに、目黒日大高出身の濱椋太郎(法大2年)が男子200mに出場する。古賀は織田幹雄記念国際で13秒40(-0.2)で2位、U20日本歴代3位をマークした。GGPでは最終10台目まで先頭争いをした。
アジア大会派遣設定記録の13秒53は突破済み。昨年の東京世界陸上5位入賞で代表に内定済みの村竹ラシッド(JAL)は出場しない。優勝とアジア大会代表内定も、ワンチャンあるかもしれない。
濱は4月の日本学生個人選手権で初の全国タイトルを獲得。追い風2.4mで参考記録にはなったが、20秒56の好記録で走った。昨年出した自己記録は20秒65(+1.0)。出場選手の資格記録の比較では、トップの飯塚翔太(ミズノ)とは0.20秒差だ。そのタイム差の中に13人がひしめくが、大舞台に強い濱が上位に進出する可能性は十分ある。
【執筆者】 : 寺田辰朗 寺田的陸上競技WEB

