【東京選手権2026レポート④】男子やり投の角田が6連勝。家族の応援が連勝継続の原動力に

 東京選手権は4月24~26日に駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で行われた。男子やり投では角田直之(ゴールドジム)が72m24で6連勝を達成した。東京選手権で勝ち続ける角田とはどんな選手で、どんな特徴があるのだろう?

●初めてだった6回目での逆転

 角田の6連勝の足跡は以下の通りだ。

21年・71m94

22年・72m67

23年・74m11

24年・72m15

25年・65m62

26年・72m24

 25年はふくらはぎの故障の影響で記録が下がったが、それ以外は71~74m台と安定している。角田の自己記録は21年の東日本実業団で投げた76m14だが、セカンド記録(74m11)とサード記録(72m67)は東京選手権で投げている(データは日本陸連サイトによる)。

 今年も優勝記録を見れば、例年と同じように安定した投げだったように見えるが、例年とは違って最終6回目の試技での逆転優勝だった。昨年までは優勝記録を「1、2回目」で投げることが多かったが、今年は1、2回目を連続ファウル。3回目もファウルなら、5連勝中の選手が記録なしで敗退するところだった。

 普通の選手なら3回目は安全策をとり、確実に記録を残しに行くが角田は違った。

「3回目で置きに行く(安全な投げ方で確実に記録を残すこと)投げはしたくありませんでした。地元で開催される大きな試合は東京選手権くらいなので、家族に思い切った投げをしているところを見せたかったんです」

 3回目は65m73と、前年の優勝記録を上回った。だが今年は増田悠吾(福井陸協)が3回目に68m82、5回目に69m53と角田を上回る記録を投げていた。それに対し角田は4回目、5回目と記録を伸ばせないどころか、失敗投てきが続いた。最終6回目でやっと72m24を投げ、逆転で6連勝を飾った。

「結婚してからは兵庫に住んでいますが、(出身地の)東京の試合で家族や親戚が大応援団になって駆けつけてくれていました。優勝する自信はあったんですが、これまでにないくらいひやひやさせてしまいました」

 角田は逆転できた理由にも、家族の存在を挙げた。

●筋力の強さと体の柔軟性

 角田は自身の強みを「筋力の強さと体の柔軟性」だと言う。

 ゴールドジムは「世界30カ国・700カ所以上・300万人のメンバーを誇る世界最大級ネットワークのフィットネスクラブ」(同社サイト)で、角田も「ウエイト・トレーニングは毎日にやっています」と自信を持つ。「フルスクワットは240kgです。色々な人から、(国際レベルへの指標となる)80mを投げる素質はあると言っていただいています」

 柔軟性は特に、「肩甲骨」の周囲が柔らかく、可動域が広い。やりを大きく引き、力を長く加えることができる。

 一方で「助走が課題」と自覚している。助走歩数は14歩だが、その歩数(全助走)で投げると「スピードが出て、最後の局面で止まることができず」にファウルをしてしまうことが多い。9歩の短助走で投げることが多く、東京選手権も6回の優勝中、21、22、25年の3回は短助走だった。

「スピードを出すと最後の局面でどうしても止まれなくて、自分で生み出したエネルギーを投げにつなげられませんでした」

 全助走でもファウルをしない技術に2年前から取り組み、今季はこれまでで一番それができているという。

「ディーン元気(ミズノ。自己記録84m66、日本代表の常連選手)さんと一緒に練習させていただいて、助走についてアドバイスをもらっています。最後の局面で止まれるように、ディーンさんがフィンランドで学ばれた左脚のブロック方法を取り入れました。そのためには脚の強化が必要ですが、自分の強みである筋出力のタイミングを生かしています」

 東京選手権ではその技術ができる自信があったが、それが過信になり少し手間取ってしまったが、最終6投目にしっかりと修正した。

●日本選手権と国スポへ

 日本選手権の角田は、10位が最高順位でまだ入賞したことがない。

「ポテンシャルはあると言われていますし、それを生かすためのトレーニングもたくさん教えていただきました。全助走を習得して持ち味を生かせるようにして、今日みたいな試合展開にならないように落ち着いて投げられれば、入賞も全然狙えます。77m台に自己ベストを引き上げておいて、74~75mを安定して投げたり、しっかり前半で投げたりできれば勝負ができます」

 そしてもう1つの大きな目標が、国民スポーツ大会に出場することだ。やり投では東京登録の強豪選手もいて、一度も出場したことがない。

「東京代表に一度選ばれたことがあったんですが、新型コロナで大会がなくなってしまったんです。自分の中では一番大きな目標です」

 6月に名古屋開催の日本選手権と、その後に行われる国スポ代表選考会、そして10月に青森で行われる国民スポーツ大会。東京選手権の6投目で見せた助走を確実に再現する技術を身につけたら、角田のやりは80mに近づいていく。

執筆者】 : 寺田辰朗          【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB