【インターハイで輝いた東京勢①】「経験不足」でも圓が女子砲丸投2位! 円盤投で2種目入賞達成!!

今年の高校日本一を決めるインターハイの陸上競技が7月30日から8月5日まで、滋賀県彦根市の平和堂HATOスタジアムで開催された。東京勢では圓(まとめ)成美(藤村女高)が女子砲丸投2位(13m61)、円盤投6位(40m34)と2種目入賞の快挙を達成した。しかし砲丸投は7月に14m10の今季高校最高記録を投げ、優勝候補に挙げられてもいた。初めてのインターハイ出場で優勝争いをしたことは「嬉しい」と言いながらも、言葉の端々に悔しさも滲み出た。圓が敗因に挙げた「経験不足」とは、どんなことを指すのだろうか。

●砲丸投は「メンタルが敗因だった」と自己分析

 大会2日目の砲丸投で全国2位という成績を残した圓だが、成長途上を感じさせるコメントが多かった。

「陸上競技は高校から始めて、東京のブロック予選も下の方から始めてはい上がって来ました。まずは全国大会の決勝の舞台に立っていること自体とても嬉しいですし、メダルを取れたことはもっと嬉しい。でも14mを投げて優勝する予定だったので、80点くらいです」

 敗因は「経験不足」だと感じている。「優勝した小川莉緒(稲生3年)さんは中学から全国をたくさん経験しています。それに対して私は経験不足で緊張しいなので、最初の方で守ってしまって。そこがもう少し勝負ができたら結果も違ってきたかな、と思っています」

 具体的には予選の投てきと決勝の3投目に、「守ってしまった」部分が現れたという。予選は12m63を投げ、12m40の予選通過記録を1回目で越えたが、「本当にチキンでした。もうゆっくりな投げで」と反省する。インターハイ投てき種目は予選と決勝が同日に行われ、特に予選B組は決勝までの間隔が短い。予選で投げた感覚が決勝に残っているため、予選といえども決勝の試技に影響していく。

 決勝の1本目で13m42でトップに立ったことは、「2本ファウルしてもいいから、結構勝負に出ました。1投目にしたらみんなにプレッシャーをかけられたかな」と自身も評価できた。だが小川に逆転された直後の3投目は「勝負どころ」と思って投げたが、12m69と低調な記録しか投げられなかった。「メンタル面を反省しないといけません」

 最終5投目は「絶対に逆転してやると思って、(砲丸を体の後ろに)残すところからのスピードを意識して、死んでもいいくらいの気持ち」で思い切り投げられた。13m61に記録を伸ばしたが、小川に38㎝届かず2位と敗れた。

 7月12日に14m10をマークし、今季高校リスト1位で滋賀に乗り込んでいた。だがその記録も「東京都の大会で会場も慣れ親しんだ競技場でした。自分が一番という心の余裕もあったので、リラックスして投げられました」と、インターハイ本番とは違うメンタルだった。全国大会の緊張感の中では、同じ動きをすることができなかった。それを素直に認められるところが、今後の圓に期待できる点である。

●円盤投は南関東予選後の新しい投げで6位入賞

 最終日の円盤投は、砲丸投以上に経験不足だった。南関東予選までは通常のフルターン(1回転半)ではなく、ハーフターン(半回転)で投げていた。全国11地区の予選が終わった段階での今季高校リストでは、41m30の11位。記録だけ見れば入賞の可能性はあったが、「(ハーフターンしかできない自分が)全国で入賞できるなんて考えていませんでした」

 しかし南関東予選後にフルターンの投げが、しっくりし始めた。東京都内の大会に「5試合くらい」出場し、40m以上を安定して投げられるようになった。

 インターハイの予選は2投目に41m68の自己新。予選全体の最高記録で通過したが、決勝では4投目の40m34以外は38~39m台と距離が伸びなかった。

「予選を終えた時はもう少し上の順位に行けると思ったので、悔しさもあります。ただ2種目入賞は、自分が陸上競技を始めた時は憧れていた成績です。大学での競技生活にもつなげられる自信になりました」

 一般的に2種目を頑張る理由としては、インターハイの対校得点を少しでも積み上げたい、というケースが多い(インカレでも同様)。圓も愛校心は大きく、共学化により校名が変わる前最後である今年、藤村女高の名前を残したいと考えていた。だが2種目を行うことは、相乗効果でどちらの種目にもプラスになることが大きな理由だった。

「(パワーポジションから)斜めに持っていく動作は似ていますし、どちらの種目も右脚を使えないと投げられません。一度砲丸投の調子が落ちていた時期があったんですが、円盤投の右脚を(入れたい位置に)入れる動きからヒントをもらって投げたら14m10が出ました」

 今後も2種目に取り組んでいくつもりであるし、やり投も加えて投てき3種目に出場していくことも、圓は考えている。

●「楽しむ初心が残っていること」が武器に

 砲丸投も円盤投も、もう少し上の順位のチャンスがあっただけに悔しさもある。だが自身の経験不足を考えれば、2種目とも十分に自己評価ができる結果だった。

 最初で最後のインターハイを、「色んな人への感謝も表せた大会になりました。砲丸投の最後の5投目を投げる前に顧問の先生から、今まで関わった全員の顔を思い出せ、と言われました。陸上部の仲間とスタッフ、学校の友だち、みんなが応援のメッセージをくれたりお守りをくれたりしましたし、親は滋賀まで応援に来てくれました。それらの人たち全てに感謝できた大会でした」と圓は振り返る。

 そして「過去一楽しい大会でした」とも。試技の合間に行うスタンドの中川信太郎監督、チームメイトとのやりとりは、逆転されても楽しんでいる雰囲気が伝わってきた。

「エリート選手たちと比べたら経験値が違いすぎました。どうしたら勝てるのか中川先生と話し合って、楽しむしかないだろう、という結論になりました。高校から始めて、楽しいっていう初心が残っていることが、ある意味自分の武器になっています。勝つためにも楽しむ、っていうテーマでインターハイを戦いました」

 圓の高校競技生活は、インターハイで終わらない。9月以降も試合に出場するし、記録も狙って行く。

「U20日本選手権でもう一度14m台を投げて、次は小川さんに勝ちたいですね。7月に14m10を投げた時のビューンって砲丸が進んで行く感覚がまだ残っているので、14mという数字を意識して、それを再現できるような練習をすれば投げられると思います」

 その上のレベルの記録も、圓は在学中に出す気でいる。

「大学に移る来年3月頃には、森千夏さんの東京都高校記録(14m92・98年)を塗り替えたいな、と思っています」

 森千夏は東京高出身で、04年には日本記録の18m22を投げ同年のアテネ五輪にも出場したレジェンドだ。「ビッグマウスかもしれないですけど」と笑う圓なら、大きな目標にも明るく突き進んで行きそうだ。

執筆者】 : 寺田辰朗         寺田的陸上競技WEB