中島、北口、橋岡ら東京陸協登録&東京出身選手がゴールデングランプリに多数出場

 セイコー・ゴールデングランプリ陸上2026東京が5月17日、MUFG スタジアム(国立競技場)で開催される。世界陸連のコンチネンタルツアーに指定された大会で、世界トップレベルの選手も参加する。東京陸協登録選手、東京の高校出身選手も多数出場予定で、昨年の東京世界陸上男子400m6位入賞の中島佑気ジョセフ(富士通。城西大城西高出身)は、国立競技場で再び快走を見せる。男子走幅跳の橋岡優輝(富士通。八王子高出身)と、女子やり投の北口榛花(JAL)は、昨年の世界陸上で予選落ちと悔しい思いをした。同じ国立競技場で再起を期している。

●中島は得意の後半型か、前半から攻める走りをするのか?

 中島の昨年の世界陸上の活躍は、社会的にもインパクトが大きかった。予選2組で44秒44の日本新(従来の記録は44秒77)。2位で通過すると、準決勝3組も44秒53の2位で通過。決勝では44秒62で6位に入った。この種目では1991年の東京世界陸上で高野進が7位になって以来、34年ぶりの入賞という快挙だった。

 世界陸連は100m毎の通過タイムを公表している。予選の中島は300mを32秒69の4番手で通過したが、フィニッシュでは前述のように2位に浮上。準決勝も300mを32秒77とほぼ同タイムで7番目に通過。そこから驚異的な追い上げで2位にまで上がった。ラスト100mは予選が11秒75、準決勝が11秒76である。

 決勝も300mを32秒67とほぼ同じタイムで通過したが、7番目の選手とは5m前後の差で最下位の8位通過。ラスト100mは11秒95と予選・準決勝よりかかったが、8人中トップのタイム。準決勝のようなごぼう抜きはできなかったが、6位まで上がってみせた。ラストの驚異的な強さが、世間的にも注目を集めた理由だった。

 中島は7位入賞の要因に、自分のリズムを崩さなかったことを挙げていた。

「結構難しい9レーンでしたが、自分の感覚、リズムを崩さずに走りました。内側から来るのはわかっていましたから、惑わされず、200mから300mで離され過ぎずにラスト100mを迎えたいと思っていました」

 だが今後、メダルを狙うには後半型のレース展開だけでは難しくなると中島は考えている。「今年は後半型にこだわらず、いろいろ(レースパターンを)試して、来年につなげたい」と自社ホームページの記事でコメントしている。

 ゴールデングランプリにはパリ五輪銅メダリストで、43秒74の自己記録を持つムザラ・サムコンガ(ザンビア)、昨年の東京世界陸上400mH金メダリストで、400mでも44秒21を持つライ・ベンジャミン(米国)らが出場する。世界のトップ選手たちを相手に中島が、東京世界陸上と同じ後半勝負を挑むのか、それとも前半から攻めるレースをするのか。今年のゴールデングランプリ最大の注目点の1つだろう。

●北口は復帰戦であり、世界記録保持者のゼレズニー氏にコーチを変更しての第一戦

 北口は22年オレゴン世界陸上で銅メダルを獲得すると、23年ブダペスト世界陸上、24年パリ五輪と連続金メダルを獲得した。23年には67m38と自身4度目の日本記録を投げ、アジア記録にも60cmと迫った。

 昨年もゴールデングランプリに64m16で優勝し、6月の2試合でも63~64mと悪くない結果を残していた。だがその6月に右ひじの故障を発症し、9月の東京世界陸上は60m38で予選落ちに終わった。その後は試合に出場していないのでゴールデングランプリが、同じ国立競技場での復帰戦となる。

 今季はコーチを、チェコ人のデイビッド・セケラック氏から、同じチェコ人のヤン・ゼレズニー氏に変更した。2月中旬に南アフリカでの合宿に出発する際、新たな一歩を踏み出す決断について以下のように語った。

「(セケラック氏の指導で)世界陸上も金メダルが取れましたし、オリンピックも金メダルを取ることができて本当に感謝しています。その中で次のステップに出た方がいいかな、とずっと悩んでいました。まだ27歳ですが、永遠に競技生活ができるわけではないので、アグレッシブな選択をいつまで続けることができるかを考えた時、今を逃すと難しいのではないか。世界一を取りましたがさらに成長したい、という気持ちで決断をしました」

 ゼレズニー氏は男子やり投の世界記録保持者。正式な契約は南アフリカ合宿を終えた4月末だったが、新たなコンビでの第一戦がゴールデングランプリとなる。北口は自身のSNSに「南アフリカでのキャンプを経て正式にコーチングをお願いすることになりました。新たなスタートをレジェンドであるヤンゼレズニーさんとできてとても嬉しいです。やり投のことはもちろんメンタリティも含めて吸収していきたいです。受け入れてくれたチームメイトにも感謝しています。これからも応援よろしくお願いします。」と綴った。

 コーチが変わっても、すぐに新しい投げができて結果を出せるとは限らない。むしろ、難しいと言えるだろう。変わっていく北口を見られる最初の試合、と思って観戦するのがいいのではないか。

 フロル・ウルタド(コロンビア)、エリナ・ゼンゴ(ギリシャ)ら64~66m台の自己記録を持つ外国選手が4人も出場する。ゼンゴは昨年の世界陸上5位で、ダイヤモンドリーグファイナル優勝者。ウルタドはブダペスト世界陸上で、5投目まで北口をリードしていた選手。世界トップレベルのパフォーマンスが見られる種目である。

●橋岡はスプリント中心だった3年間から「跳躍の技術を進歩させる」シーズンに

 今年は五輪も世界陸上もないシーズンということで、新たな挑戦に取り組む選手が多い。男子走幅跳の橋岡も、北口と同様にコーチを変更した。

 橋岡は19年世界陸上8位、21年東京五輪6位と連続入賞。22年オレゴン世界陸上では予選をトップ通過した(決勝は10位)。23年から25年まではタンブルウィードTCのレイナ・レイダー氏のもとで、助走スピードのアップに取り組んだが、今年4月から米国サンディエゴを拠点とするジェレミー・フィッシャー氏の指導を受け始めた。

「走りについては3年間(レーダー氏から)習ってきて、新しいことにチャレンジできるのが世界大会がないこの1年になってくると思いました。また跳躍の技術を進歩させるために、新しいコーチを探しました。以前はタイミングを取ってリズム重視というか、自分の感覚の中でやってきたんですが、(この3年間は)走りすぎているのかな、という感覚に変わってきたので、間を取れるように、一度基礎に立ち返るような冬期を過ごしてきました」

 新コーチのフィッシャー氏は、自身も走高跳の元トップ選手で、三段跳の五輪メダリストらを指導してきた。この3年間で「スプリントの絶対値が上がった」感覚はあり、それを踏み切りに結びつける作業に新コーチとともに取り組んでいく。

 昨年までは「スプリントを完全に習いに行って、それをどれだけ助走につなげられるか、吸収できるかが課題だった」が、今年からは「自分主体で、自分がしたい動きの中で、さらにどう深めていくか、気づきやアドバイスをもらえれば、と思っています」と、スタンスも変わる。

 3月に8m14(+1.2)とシーズン初戦としては好記録をマークし、渡米後も5月8日には8m27(+2.2)と勢いが増している。自分主体となった取り組みの橋岡が、高校時代を過ごした東京でどんな跳躍を見せるのだろうか。

●800mで快走したばかりの田邉が400mに出場

 東京陸協登録選手が多いのが男子100m。日本記録保持者の山縣亮太(セイコー)、昨年の世界陸上代表だった桐生祥秀(日本生命)と守祐陽(渡辺パイプ)、静岡国際と木南記念を連勝したデーデー・ブルーノ(セイコー)らが、パリ五輪金メダリストのノア・ライルズ(米国)に挑む。

 山縣以外でも女子100mHの福部真子(日本建設工業)、女子三段跳の森本麻里子(オリコ)が東京陸協登録の日本記録保持者として登場する。

 男子では200mの鵜澤飛羽(JAL)、3000mの森凪也(Honda)、400mHの豊田兼(トヨタ自動車。   桐朋高出身)が、女子では1500mの木村友香(積水化学)、3000mの廣中璃梨佳(ユニクロ)、やり投の武本紗栄(オリコ)らが昨年の東京世界陸上代表として、再び国立競技場で躍動する。

 男子400mに出場する田邉奨(中大2年。広尾高出身)は、昨年の日本選手権3位(45秒39)の実績を持つが、今年は木南記念800mで1分45秒57の日本歴代4位(学生歴代2位、東京記録)をマークした。400mで、同じ後半型の中島にどのくらいの差で前半を走り、得意の後半でどんな走りができるか。大学2年生が地元で、どんな成長を見せるかに注目したい。

執筆者】 : 寺田辰朗          【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB