女子三段跳はママさん選手の筆野が12m22で優勝。女子400mでは姉妹入賞が実現
東京選手権は4月25~27日に駒沢オリンピック公園総合運動場で行われた。初日の女子三段跳は筆野友里(TACC)が2回目に12m22(-0.2)を跳び、2位の西澤海来(ゴールドジム)に23cm差で優勝した。筆野は6年のブランクを経て復帰後に、出産も経験している選手。異色とも言える競技歴を紹介する。三段跳がママさん選手なら、2日目の400mは姉妹選手が揃って入賞した。家族への思いも東京選手権には現れていた。
●6年のブランクと出産を経て復帰した36歳
女子三段跳優勝の筆野友里は、二度のブランクを経た36歳のママさんジャンパーだ。
「東京選手権は何回も優勝していますが、当時とは環境が違います。育児の合間を縫っての練習は、1日30分から1時間。やりたい練習をピックアップして、1つ1つの動作に取り組んでいます。母として勝てたことはすごくうれしいですね」
現在の目標は「日本選手権に出場して、入賞できたらいいな」と設定。その思いは筆野の競技実績から生じている。
小6で走幅跳の全国4位、中3で四種競技の全日中3位、高3で三段跳の日本ジュニア選手権と国体3位、大学2年で関東インカレ5位、日本インカレでも8位に入賞した。
「日本選手権だけ高3の10位が最高で、入賞できていないんです」
しかし大学4年(11年)のシーズン途中で競技を離れ、17年に28歳で復帰するまで「運動はまったくしなかった」。それが子どもたちを指導したことがきっかけで、「体を動かすことは楽しい」と改めて気づいた。
復帰後はマスターズの試合に多く出場した。「東京選手権優勝や日本選手権入賞ができる位置にはいませんでした。どうあがいても12mは跳べない」と思ったからだ。それが徐々にエリート選手の競技会にも出るようになり、19年には12m35と、11年に出した12m39の自己記録に4㎝まで迫った。
しかし22年3月に出産し再度ブランクが生じた。出産後の最高記録は12m23(23年)で、今回の東京選手権での記録は1㎝及ばなかった。それでも「自分がやりたい形で陸上競技ができている」と言う筆野にとって、東京選手権優勝は日本選手権入賞に向けての手応えになった。
●「頑張ろうね」と励まし合う入江姉妹
女子400mは入江有咲陽(法大2年)が57秒38で優勝し、妹の入江美波(八王子高2年)も59秒55で5位に入り、ダブル入賞を果たした。
3学年差ということもあり、これまで同じレースを走ったことはなかった。有咲陽が同期日開催の日本学生個人選手権の標準記録を切ることができず、東京選手権に出場したことで実現した。
「もしかしたら姉妹対決ができるかもね、と言っていたら、予選から同じ組になって。決勝と2本も一緒に走ることができるとは思っていませんでした」
予選は有咲陽が57秒41で1組1位で通過。美波は5位だったが59秒97で、プラス2の2番目で通過した。美波は8番目のポジションで決勝に臨んだわけだが、予選よりもタイムを上げて5位に入った。
「妹は陸上の仲間であり、ライバルであり、家族でもあるんです。同じレースを走るなんてなかなか実現しないこと。貴重な経験をさせてもらったな、と思っています」
日常生活において競技のことを極力話さない選手もいるが、入江姉妹は「頑張ろうね、って励まし合って」いる。競技のことを話してもストレスにならない関係ができているからだろう。
「大きな目標はないのですが、一日一日楽しむことを一番に考えて取り組んでいます。東京選手権もすごく楽しかったです」
姉妹にとって良い思い出になると同時に、競技へのモチベーションが上がるきっかけになったのではないか。