【国民スポーツ大会東京勢展望(3~5日目)】男子では400mHの豊田と800mの田邉、女子では棒高跳の小林ら、成年種目に優勝候補が続々登場。10年ぶり天皇杯獲得も期待

 第80回国民スポーツ大会の陸上競技が10月15日~19日、青森県青森市のカクヒログループアスレチックスタジアムで行われている。東京チームは29人の選手が選ばれ(東京チーム選手団★★★★★リンク挿入https://toriku.or.jp/storage/963b04b28a96de9307e2e62f5e3eba22.pdf)、後半では3日目の女子棒高跳に小林美月(日体大4年)、4日目の男子300mに濱椋太郎(法大2年)、5日目の男子800mに田邉奨(中大3年)、男子400mHに豊田兼(トヨタ自動車)と、成年種目で優勝争いが期待できる選手が次々に登場する。少年男子Aカテゴリーでは300mの砂川響介(明大八王子高3年)、5000mWの堀千秋(富士高3年)らインターハイ個人種目で失敗した選手たちが雪辱を期す。16年岩手国体以来、10年ぶりの天皇杯(男女総合得点争い)獲得の期待もできそうだ。

●3日目(10月17日):小林の完全復活なるか? 中学生大西のジャンプにも注目

 大会3日目に決勝が行われる種目で、東京勢がエントリーしているのは下記の4種目。( )はエントリー時点の資格記録のランキングである(4、5日目も同じ)。

——————————————————————————-

(10)少年男子Aやり投:上田惺(駒場高3年)

(6)少年男子B走幅跳:大西凌駆(ゆめおりAC)

(2)成年女子棒高跳:小林美月(日体大4年)

(10)少年男子A5000mW:堀千秋(富士高3年)

※国民スポーツ大会の年齢区分は以下の通り

成年:高校卒業後の選手

少年A:高校3年生と2年生

少年B:高校1年生と中学3年生

——————————————————————————-

 成年女子棒高跳の小林美月が完全復活を期して出場する。

 強敵は9月のアジア大会(5位)代表だった大坂谷明里(愛媛・愛媛競技力本部)、今年の関東&日本両インカレ優勝者の村田蒼空(群馬・筑波大4年)、日体大の先輩の台信愛(福岡・日体大SMG)ら。小林は今年の日本選手権では2位の大坂谷に15㎝差の3位、日本インカレでは同学年の村田に5cm差の2位だった。

 小林は昨年の日本選手権優勝者で、そのときに学生記録の4m31に成功した期待の選手。しかし今季は1月に腰椎分離症となり、「3~4カ月」は短助走の練習も、跳躍練習もできなかった。痛みはなくなって思い切り跳躍をできるようになってはいても、ブランクの影響は少なからずあった。

 9月の日本インカレでは「やっと自分らしい跳躍になってきたので、ここからです」とコメント。今国スポで目標としている自己記録更新ができれば、優勝の可能性は十分ある。

 少年男子B走幅跳に全国的にも注目されている中学生選手、大西凌駆が登場する。大西は8月の全日本中学選手権では100mに出場し、10秒91(±0)で7位に入賞した。予選のタイムでは9組1位の大西が10秒70(+0.7)と、予選全組を通して1番良かった。優勝した選手と7位の大西が0.11秒差という激戦のレースだった。

 国スポで出場する走幅跳では7m12(+1.3)と、今季中学リスト3位の記録を持つ。少年Bなので高校1年生も参加するため、出場資格記録のランキングでは6位。同じ中学生の松村春汰(北海道・小樽朝里中)が、全日本中学選手権優勝時の7m41(±0)で資格記録1位。大西が同じ中学生に、どこまで迫ることができるか注目される。

●4日目(10月18日):念願の国スポ初出場の廣瀬と、“300m”種目で得点を積み重ねられるか

 大会4日目に決勝が行われる種目で、東京勢がエントリーしているのは以下の7種目だ。

——————————————————————————-

(-)少年女子A300m:後藤凛(八王子高3年)

(-)少年男子A300m:砂川響介(明大八王子高3年)

(8)成年女子三段跳:下元香凜(東学大3年)

(-)成年男子300m:濱椋太郎(法大2年)

(8)少年男子A300mH:藤原啓寛(駒場東邦高3年)

(8)成年男子円盤投:安藤夢(つくばTP)

(3)成年女子10000mW:廣瀬夏希(早大4年)

——————————————————————————-

 成年女子10000mWの廣瀬夏希が、念願の国スポ初出場を果たす。国体の選手枠は29人で、全種目で選手を選べるわけではない。廣瀬は東京都の選考競技会には勝っても、全国レベルは他の種目より低いと判断された。「(学生)ラストイヤーでやっと選んでもらえました」

 長い距離でのアピールが功を奏した。選考レースは5000mWで行われるが、スピードがないため全国トップレベルの記録を出せなかった。だが今年は3月の全日本競歩能美大会ハーフマラソン競歩で1時間44分24秒の4位、5月の関東インカレ10000mWで46分26秒68の3位。関東インカレのタイムが、国スポのエントリー選手で資格記録3位につけている。9月の日本インカレ5000mWでは12位と入賞できなかったが、国スポの10000mWには自信がある。

「トラックは学生の大会に出ることが多いので、実業団の方々と戦えるのが楽しみなんです。そして東京都を背負って、東京のユニフォームを着て戦えることもすごくうれしいです。そんな国スポに高校からずっと出たかったんです。私にとっては夢のような舞台です」

 発表されたエントリー選手は学生が多く、代表レベルの実業団選手は不在のレースになる。であるならばなおさら、「3位以内に入りたい」という目標を実現させたい。

 また、この日は“300m”種目の決勝が6種目行われ、そのうち4種目に東京勢がエントリーしている。陸上競技は100m、200mの次は400mで、オリンピック、世界陸上、日本選手権、インターハイなどでは400mと400mHが行われている。“300m”で行う狙いは、400mと400mH選手に通常よりも速いスピードを経験させることで、専門種目でも今以上のスピードに対応できるようにさせること。200mの選手にはスピード持久の自信を持たせることなどがある。

 少年男子A300mの砂川響介は、400mで今季高校リスト6位につけている。「スプリントが速い人が(スタミナ型の自分より)有利になります」と認めるが、8月の東京陸協国スポ1次合宿では100m選手たちからスピードを出す走り方を学んでいた。

 インターハイでは400mの優勝候補の1人に挙げられながら、まさかの予選落ち。4×400mRでは明大八王子高の3走を務め全国2位に貢献したが、「インターハイの悔しさを国スポにぶつけたい」と強い意思を見せる。

 成年男子300mの濱椋太郎は、砂川とは逆で200mが専門種目。今年の関東インカレ200m2位、日本選手権200mも6位と健闘した。夏に故障があって9月の日本インカレは予選を通過できなかったが、200mのスピードで押し切る走りを期待したい。

 少年男子A300mHの藤原啓寛は、インターハイ400mHの4位入賞者。「できれば3位以内に入りたい」とメダルも目標にするが、距離が100m短い種目では結果をイメージしにくいようだった。300mHのハードル間は35mで400mHと同じだが、1台目までの距離が45mではなく50mとなる。400mHのリズムに馴れている選手が5mの違いをどう克服するか、も注目ポイントだ。

●5日目(10月19日):国スポ直前に田邉が東京新記録。田邉と豊田の日本歴代4位記録を持つ2人が登場

 大会5日目の最終日に決勝が行われる種目で、東京勢がエントリーしているのは以下の5種目だ。

——————————————————————————-

(5)成年男子800m:田邉奨(中大3年)

(6)成年女子400mH:益子芽里(長谷川体育施設)

(4)成年男子400mH:豊田兼(トヨタ自動車)

成年少年女子共通4×100mR:東京

成年少年男子共通4×100mR:東京

——————————————————————————-

 国スポを前にビッグニュースを届けてくれたのが、成年男子800mに出場する田邉奨である。10月11日の日大競技会で1分44秒99と、東京勢として初めて1分45秒を破った。昨年までは400mが専門だった選手で、日本インカレにも優勝した。本格的に800mに取り組み始めて1年目で、関係者も驚く成長を見せている。

 だが今の800mは、そう簡単に勝てない種目になっている。田邉の1学年下の落合晃(滋賀・駒大2年)は今季1分43秒45まで日本記録を縮め、アジア大会でも日本勢64年ぶり金メダルという快挙を成し遂げた。落合だけでなく、資格記録が1分45秒台前半までの選手が落合、田邉を含め5人もいるのだ。

 田邉が800mを本格的に始めたのは、世界で勝負することを考えてのこと。そのためには「落合君と勝負する。落合君に勝つことがまずは必要」と、今季に入っての取材で何度か話していた。今、最も熱い種目の1つである男子800mの戦いに田邉が挑む。

 成年男子400mHは豊田兼の復活が期待される。豊田は24年のパリ五輪代表で、その年6月の日本選手権で47秒99の日本歴代4位をマークした。その後はケガの影響が微妙に残り、昨年は48秒55、今季は48秒65がシーズンベストにとどまっている。48秒台中盤は悪い記録ではないが、日本選手権で昨年予選落ち、今年7位と勝負強さも影を潜めてしまった。

 国スポには9月のアジア大会代表2人が出場しない。9月末のYogibo Athletics Challenge Cup2026で優勝した筒江海斗(熊本・ST-WAKO)と、0.02秒差の2位だった豊田の優勝争いが予想される。豊田としては国スポで勝って、復活の狼煙をあげたい。

 大会初日が終了した段階で、東京チームは成年女子走高跳の森﨑優希(日女体大3年)が優勝、少年男子共通110mHの淺内湧一朗(日大豊山高2年)が3位と、好発進をしている。だが成年男子110mHで3位以内が有力だった横地大雅(Digverse)が、ケガのため欠場を余儀なくされた。

 同じハードル種目の淺内は、「やっぱりショックはありました」と初日の110mHレース後に話した。

「横地さんは8月の合宿ではすごく元気で、めっちゃ速く走っていました。国スポ、どのくらいの結果を出すのだろう、と思っていたくらいです。必要以上に気にしたわけではありませんが、横地さんの分まで、という意識も半分くらいありました」

 棟方拓也東京陸協国体強化部長は国スポ1次合宿のときに、「優勝を狙えるメンバー」と強調した。

「横地君や(成年男子円盤投の)安藤君たち成年選手が、東京チームのために何度も合宿に来てくれています。彼らがコミュニケーションをとってくれるだけで、少年選手たちの力になっているんです。成年選手間のチームワークも1月の沖縄合宿などで強くなり、みんなでチームを引っ張っています。今年のチームの雰囲気はかなり良いと感じています」

 チームの中心選手が万全の調子で臨めなくても、周りの選手がカバーする。そんな戦いができたとき、10年ぶりの天皇杯(男女総合優勝)獲得が見えてくる。

【執筆者】 : 寺田辰朗         寺田的陸上競技WEB