インターハイ東京都予選は5月9~10日、16~17日と駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で開催される(ハンマー投のみ5月5日に大井ふ頭中央海浜公園陸上競技場で実施)。一昨年、昨年と男子110 mHで高校記録を更新した古賀ジェレミー(東京高。現順大)は卒業したが、この種目で昨年のインターハイ2位の冨永笙ノ介(明星学園高3年)にレベルの高いパフォーマンスが期待できる。短距離、跳躍、投てきと、全国大会でも入賞が期待できる選手や、激戦となりそうな種目を紹介していく。
●短距離・ハードル:冨永は昨年インターハイ2位のとき以上の手応え

冨永は東京選手権(4月26日)で手応えを得ていた。向かい風2.0mの中で14秒29は、「インターハイの13秒91(+1.6)よりも価値のある記録」だと感じられた。
取り組んできたことが形になったことも、自信につながった。
「一番変えたのは前半の力を抜いて、かつインターバルを速く刻む動きをすることです。課題だった後半の減速が、少なくなってきました。今日も後半で、2位の方に(0.10秒差で)競り勝って1位になることができました。修正したところが上手く生きたレース展開ができてよかったと思っています。ハードリング(空中動作)中は力を使わないことを、日々の練習やドリルの時から意識しています」
身長が「172~173㎝」と、この種目ではかなり小さい部類に入るが、そこを逆手にとって武器に変えている。ハードル間を小さく刻むことで遠くから踏み切り、上方向に跳び上がらないハードリングとなる。それを可能にする「跳躍力」が冨永にはある。
「体が小さい分体重が軽く、人並みのバネでも他の人より遠くに跳ぶ力があると自分では思っています。ハードリングからインターバルへの連係動作もスムーズで、そこの技術などで補っているのかな」
指導する明星学園高の新井智之監督も「動き的には抜き脚がコンパクトで、踏み切った瞬間に抜き脚が前に出てきます。性格的には物怖じしない子で、色んな人に質問して、自分で考えて取り入れています」と、冨永の特徴を説明する。
この種目では古賀ジェレミーが昨年、インターハイも国民スポーツ大会も優勝し、13秒45の高校記録も樹立した。インターハイはタイムレース決勝となったため、冨永が自身初の13秒台を出して2位になったが、古賀は別の組で13秒18(+2.2)という驚愕のタイムを叩き出した。
東京都内の大会から戦ってきた冨永にとって、大きすぎる壁だったかもしれないが、東京選手権で13秒91以上の走りができたことで古賀の背中が見え始めた。
110 mHは冨永以外にも、全国レベルの選手が多く出場する。門田拓磨(東京高3年)は昨年のU18大会110 mJHで4位(13秒81・±0)に入り、淺内湧一朗(日大豊山高2年)は昨年のU16大会110 mJHで優勝(13秒97・-0.4)した。冨永のチームメイトの櫛野カリック(明星学園高3年)も、一昨年のU18大会で3位の実績がある。櫛野は100 mでも可能性がある選手だが、新井監督は「以前は100mを言い訳にしていましたが、今年は110 mHで勝負してくれると思います」と期待する。

短距離種目では増田陽太(八王子高2年)が注目されている。昨年の国スポ少年B100m4位の実績を持ち、200 mでも4月の第5・6支部予選会に21秒08(+0.8)で圧勝した。しかし100 mは増田だけではない。昨秋の新人戦では小島璃大(立教池袋高3年)が10秒48(+1.7)の同タイムながら、増田に競り勝っている。
今年に入ってからは東京選手権(4月25日)で高校生が上位を占めた。向かい風1.9mでタイムは良くなかったが、スタートでリードした増田が10秒64で優勝。10秒81のジョセフ ニコラス陸都(足立新田高2年)、10秒82の小島、10秒82の櫛野に快勝した。
インターハイ東京都予選が追い風に恵まれれば、10秒3台の好記録が期待できる。
●跳躍:男子走高跳の清水と女子の八王子高勢が全国優勝候補になれるか?
跳躍種目も全国レベルの選手が多数出場する。
昨年の全国大会実績では、男子走高跳で国スポ少年共通4位の清水怜修(明星学園高3年)が頂点に近い位置にいる。東京選手権(4月25日)は1m95の4位に終わったが、新井監督は「エンジンをかけていないだけです。ゆっくり大きな試合に合わせて行きます」と心配していない。在学中に2m20の東京都高校記録を更新することを、清水は目標としている。
「明星学園高では短距離ブロックと跳躍ブロックに分かれて練習をしていますが、清水はこの冬、基礎体力作りやスプリント練習を、短距離ブロックと一緒にやることも多かった。思うところがあったのだと思います」
走高跳は助走をそれほど速いスピードで走るわけではないが、速く走る能力を上げることで色々な局面での余裕度が上がり、踏み切りに結びつけやすくなる。
東京都予選で2m12の自己記録更新ができるかどうかはわからないが、2m07の自己記録を持つ星海成(板橋高3年)との戦いが白熱すれば、優勝記録が2m10以上になる可能性は十分ある。
女子跳躍種目にも全国大会入賞者が多い。
走高跳では谷口天音(白梅学園高2年)が、昨年のインターハイ8位、U18大会6位と連続入賞した。その谷口に昨秋の新人戦で勝ったのが立山侑佳(八王子高2年)で、東京選手権(4月26日)でも東京の高校生では最上位の2位に入った。しかし立山、3位タイの谷口、やはり3位タイの瀬上真央(八王子高2年)の3人は1m66の同記録だった。

「谷口さんはずっとライバルで、去年は負けることが多かったので、同記録ですが勝てたことは自信になります。でも2週間後のインターハイ東京都予選で勝たないと意味がないと思っています。そこで実力をしっかり発揮して、南関東予選、インターハイにつなげたい。1m70以上を跳んで、インターハイで入賞するのが目標です」
八王子高の女子跳躍勢は、走幅跳は近藤花奏(2年)が5m93(-0.3)で、三段跳は酒井珂璃那(3年)が12m47(+2.1)で東京選手権を制した。インターハイで跳躍3種目3位以内も、現実的な目標となってきた。
だが走幅跳には、昨年のU18大会2位の川端梨聖(東京高3年)もいる。三段跳には新坂空亜(八王子高1年)という有望新人も入学してきた。東京都予選の女子跳躍3種目はハイレベルの争いが展開されそうだ。
●投てき:女子砲丸投の圓は強豪校ではない環境で全国入賞レベルに成長
投てき種目では福宮佳潤(東京高3年)が注目選手の1番手。昨年は男子砲丸投でインターハイ4位に入っているが、51m28と25年高校リスト3位の記録を持つ円盤投でも全国Vの可能性がある。
砲丸投では原裕斗(八王子高2年)もインターハイ8位、U18大会4位と入賞している。内藤源二(松が谷高2年)もU16大会優勝と、今季への期待が持てる。男子やり投では上田惺(駒場高3年)が昨年のインターハイ8位、U18大会でも8位に入賞した。
女子では円盤投の村山ジョイ希望(東京高2年)がインターハイ3位、U18大会優勝の実績を持ち、今季はインターハイでも優勝を狙える。横倉楓(八王子高2年)もU16大会で7位に入賞している。
全国大会入賞の実績はないが、面白い選手が東京選手権女子砲丸投(4月24日)に優勝した。圓(まとめ)成美(藤川女高3年)が12m81と、インターハイ入賞を狙える記録を投げたのだ。昨年は12m36を投げていたが、「冬期から記録が伸びて、練習では13m30前後を毎回1本は投げています」と圓。13m30は、昨年のインターハイなら5位に相当する記録である。

自身の特徴を、次のように話してくれた。
「小さい頃から色んなスポーツをして、言われたことを体で表現することができる方です。ウェイトトレーニングの数値は全国合宿に行ったら下の方でしたが、体の使い方や短距離の記録は良い方でした。スピードを生かした投げができると思っています」
50mを6秒9で走り、バク転もできる。
藤村女高は伝統がある学校だが、ここ20年ほどはインターハイに出場していない。来年度の男女共学化に向けて生徒数の調整をしているため、今年の部員は3人だけ。顧問の中川信太郎監督も、短距離が専門だった。その環境で投てき種目の全国入賞レベルの選手が育ったのは、どういう経緯があったのだろう。
中川監督は「初心者の選手と初心者の指導者が、コミュニケーションを取りながらやってきたことがよかった」と感じている。
「他の指導者だったらこれができたら、次はここまで行ける、と一気に高いレベルに向かわせたかもしれません。しかし私は少しずつ学ぶことしかできません。その分、丁寧にかみ砕いて説明したのが、彼女にもわかりやすかったのだと思います。2人で試行錯誤したことが、彼女にとって落とし込みやすかったのでしょう。小さなステップで着実に成長してきました。部員が3人だったことも、1人1人に寄り添う指導ができて、時間をかけて見てあげることができました」
圓が体格に恵まれていたことに加え、練習を人一倍行った。「ライバルと同じ練習をしていたら追いつけません。ネットを使って壁に向けて、100本以上投げたりします。記録がわからないので一喜一憂しないで、フォームが固まったと思います。ウェイトトレーニングは中負荷ですが、3時間をかけて行ったりしています」
昨年はインターハイ南関東予選で、初めて11m台を投げ喜んでいたら、逆転されて7位に落ちて全国大会出場を逃してしまった。U18大会では1cm差でベストエイトに残れなかった。メンタル面の悔しさも成長の要因となった。
中川監督は、インターハイでは13m50以上で3位以内を考えているが、圓自身は「14mから14m50で優勝」を目標としている。
「共学になって名前が変わる前に、藤村女子の名前を残したいんです」(圓)
“手作り”と表現できそうな成長を見せる選手の挑戦に注目したい。
【執筆者】 : 寺田辰朗 【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB

