【全国都道府県対抗駅伝に挑む東京チーム・男子編】全国高校駅伝30年ぶり入賞と佐藤の箱根駅伝9区区間賞。拓大一高勢を中心に優勝争いを

第31回全国都道府県対抗男子駅伝が1月18日、広島市の平和記念公園前を発着点とする7区間48.0kmのコースで行われる。東京代表にはキャプテンの米井翔也(JR東日本)ら10選手が選ばれている。東京チームは12年大会と13年大会の連続2位が過去最高順位。その2年間は一般区間に日本トップレベルの強力選手を擁していたが、3年前の23年大会は全員が東京の高校出身選手で3位と健闘した。今年もメンバー全員が東京の高校出身選手。全国の強豪チームに、どんな戦いを挑もうとしているのだろうか。

●駅伝で強さを発揮する拓大一高勢

「今年は拓大一高に勢いがある」という声が、東京チーム内からも出ている。12月の全国高校駅伝では拓大一高が東京勢30年ぶりの入賞を、東京高校最高記録で達成。正月の箱根駅伝では拓大一高出身の佐藤有一(青学大4年)が、9区区間賞で青学大の3連勝に貢献した。

 全国都道府県対抗男子駅伝の各区間の距離と、出場選手の年齢カテゴリーは以下の通り。

第1区・7.0km(ジュニアA高校生)

第2区・3.0km(ジュニアB中学生)

第3区・8.5km(社会人・学生)

第4区・5.0km(ジュニアA高校生)

第5区・8.5km(ジュニアA高校生)

第6区・3.0km(ジュニアB中学生)

第7区・13.0km(社会人・学生)

 高校生は代表4人中3人を拓大一高の選手が占めているため、3区間中少なくとも2区間は同高の選手が走る。全国高校駅伝1区(10km)で全国トップレベルの選手たちと渡り合った木村悠未(2年)、3区(8.1075km)で2つ順位を上げた山田莉生(1年)、4区(8.0875km)で区間ヒト桁順位の選手と小差だった寺内頼(3年)の3人で、「年末年始の合宿では、3人とも悪くありませんでした」と拓大一高の青柳友博先生。

「今年(25年度)のチームはトラックで(5000m13分台の)記録を持っていなくても、駅伝で結果を残してきました。全国トップの13分30秒前後の選手たちは強いのですが、13分50秒台の選手たちに引けは取りません」

 拓大一高の選手たちは11月の関東高校駅伝、12月の全国高校駅伝と、自己記録では上の選手に区間順位で勝ってきた。

 OBの佐藤も同じで10000mの自己記録は28分07秒75だが、箱根駅伝9区では27分台の選手に勝っている。佐藤は後輩たちの全国高校駅伝7位入賞が、「本当に励みになった」と言う。「自分の在学時には一度も全国高校駅伝に出られなかったので、後輩たちが入賞したことは心の底から嬉しかった。自分も箱根駅伝で優勝してやる、という気持ちになりました」

 元旦のニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)でも、東京出身選手が活躍した。6区区間賞の嶋津雄大(GMOインターネットグループ)と7区区間賞並木寧音(SUBARU)は東京の高校出身選手。東京チームに追い風が吹いている。

●目標は“優勝”。そのためのレース展開は?

 東京チームは過去10年間、全国都道府県対抗男子駅伝で以下の戦績を残してきた。

2016年・16位

2017年・7位

2018年・10位

2019年・18位

2020年・19位

2021年・大会中止

2022年・大会中止

2023年・3位

2024年・8位

2025年・11位

 チーム最高成績は12年大会と13年大会の連続2位。12年大会では3区の高橋優太(当時エスビー食品)がトップに立ち、2区以降も2~4位でタスキをつなぎ、アンカーの7区若松儀裕(当時日清食品グループ)が1人を抜いて2位でフィニッシュ。13年大会は東京の中学出身の大迫傑(当時早大)が3区でトップに立ち、4区以降も2位を走り続けた。アンカーの上野裕一郎(エスビー食品)は、優勝した兵庫を猛追し、1分15秒あった差を5秒まで縮める走りを見せた。大迫はその年のモスクワ世界陸上10000m代表に入った選手で、上野は09年ベルリン世界陸上5000m代表だった。若松と高橋もニューイヤー駅伝で区間賞を取ったり区間上位に入ったりしている。

 それに対して23年の3位は、3区の茂木圭次郞(旭化成)も7区の嶋津雄大(当時創価大4年)も、ニューイヤー駅伝の区間上位や箱根駅伝区間賞の活躍は見せていたが、代表レベルではなかった。今年も23年大会に近い選手構成になる。

 キャプテンの米井は25年の日本選手権5000mで14位。大物選手が何人も予選落ちする激戦種目だったが、結果を残した。競り合いが予想される3区向きだが、2月にはハーフマラソンで1時間0分台の好記録もマーク。単独走となる可能性が高い7区でも力を発揮できる。

 佐藤の箱根駅伝9区区間賞は独走状態だった。全国都道府県対抗男子駅伝では7区で力を発揮するタイプだが、佐藤自身は「3区の8.5kmも自分に向いている」と、スピード区間にも意欲を見せている。

 他県のメンバーを見ると簡単でないことはわかっているが、東京チームの目標はあくまで“優勝”である。東京チームのスタッフでもある青柳先生は、優勝争いをするために次のようなレース展開を考えている。

「1区の高校生が先頭に近い位置でタスキを渡せたら、2区、3区もその流れで走れると思います。4区と5区の高校生区間で、高校駅伝で上位に入ったメンバーがいる福島、宮城、兵庫、京都などにどこまで対応できるか。そこが勝敗に影響します。駒大高の池谷陸斗(3年)選手は13分台を2回出していますし、世界クロスカントリー選手権の日本代表にも選ばれた選手です。どの区間でも区間上位が期待できます」

 今年の東京チームは高校生区間の頑張りが重要になりそうだ。

●東京陸協独自の駅伝プロジェクトによる強化サイクル

 東京チームの中学生代表は溝部幸太(南千住二中3年)、今泉泰司(城北陸上クラブ・中学2年)、伊藤洋輝(鹿骨中3年)の3人。伊藤は2年前に、溝部は昨年、東京チームのプロジェクト選手として全国都道府県対抗男子駅伝に同行している。男女とも2年生以下の高校生1名、中学生1名が選ばれる。試合には出場できないが選手たちと同じ行動をして、大会の雰囲気を経験することがその後につながるのだ。

 溝部は25年の全日本中学選手権3000mで11位に成長。今泉も同レース16位と健闘した。伊藤はスピード型の選手で、1500mで全日本中学選手権決勝に進んだ。全国都道府県対抗男子駅伝では中学生区間が、東京チームのアドバンテージになる。

 東京陸協は駅伝プロジェクトを00年代中盤に立ち上げ、長距離選手の強化に多角的に取り組んできた。夏には涼しい高地で中学生・高校生40人で合宿を行う。この規模で合宿を行う都道府県はあまりないのではないか。年に2回程度の合同練習会、年末年始の短期合宿も毎年行っている。年に3回程度のプロジェクトレースでは、大学生にペースメーカーを依頼し記録向上を目指す。

「合宿で寝食を共にすることで、性格など練習だけではわからない部分も見えてきます。強化方針や、駅伝の起用区間の判断材料になります」(小川欽也駅伝プロジェクト部長)

「指導者たちは学校の垣根を越えて、他校の選手にもアドバイスをしています。指導者間でもあの子はこの練習をもっと丁寧にやった方が良い、補強はこのメニューが合っている、ということを遠慮なく話し合っています」(青柳先生)

 他県では駅伝強豪校が高校生メンバーを独占することが少なくないが、東京では複数チームの高校に全国レベルの選手が育つ。今年も東京チームの高校生エースは駒大高の池谷である。

 ニューイヤー駅伝7区区間賞の並木も、全国都道府県対抗男子駅伝に出場することはできなかったが、プロジェクト選手として大会を経験した。プロジェクトで強くなった中学・高校生選手が全国都道府県対抗駅伝を経験し、中学・高校の全国大会や、卒業後も主要駅伝などで活躍する。そして東京チームに戻って全国都道府県対抗駅伝を走り、優勝を目指す。この強化サイクルが確立されていることが、東京チームの強さと言えるだろう。

執筆者】 : 寺田辰朗          【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB