男子第76回・女子第37回全国高校駅伝が12月21日、京都市のたけびしスタジアム京都付設駅伝コース（男子は７区間42.195km、女子は５区区間21.0975km）に都道府県代表47チームと、地区代表11チームの計58チームが参加して行われる。東京都からは11月３日の東京都高校駅伝に優勝した男子の拓大一高と、女子の順天高が出場する。拓大一高は東京都高校駅伝、関東高校駅伝と勝負強さを見せた。全国大会でどんな戦いができるチームなのだろうか。
●キャプテン不在の関東大会で強さを発揮
拓大一高の強さは東京都大会での逆転勝ち（２時間08分36秒）と、エースを欠いた関東大会（11月22日・埼玉県熊谷市開催）での３位（２時間05分36秒）に現れていた。
都大会で負けても関東大会で南関東代表枠を勝ち取ることも可能だが、「競技的にも精神的にもチームの大黒柱」（青柳友博監督）であるキャプテンの寺内頼（３年）が、大学受験日と重なり関東大会には出場できない。また、千葉県のレベルが高いこともあり、都大会に優勝することに全精力を注いだ。
しかしインターハイ東京都予選や南関東予選などの個人成績では、「駒大高が抜けていました」と青柳監督も認めざるを得ない状況だった。「２連覇ではなく、挑戦者として都大会に臨みました」
東京都大会は１区で出遅れたが３区（8.1075km）の山田莉生（１年）が、区間賞の快走で駒大高との41秒差を逆転。４区（8.0875km）の寺内も区間賞で２位に57秒差とすると、５区（３km）の上吉川諒矢（３年）も区間賞で１分04秒まで差を広げた。６区の古屋瑠佐（２年）も区間２位、７区の相川健太（３年）も区間３位でまとめ危なげなく逃げ切った。
関東大会は１区（10km）の木村悠未（２年）が頑張った。東京都大会では同じ１区で駒大高に49秒差を付けられてしまった。２区（３km）の林昊希（２年）が差を詰めなければ、「終わっていたかもしれません」（青柳監督）という走りだった。しかし関東大会では区間７位だが29分42秒で（都大会は30分41秒）、区間賞選手と16秒差と健闘した。
３区の山田は区間２位と都大会に続いて快走し、４人抜きでチームを２位に浮上させた。「ロードで強さを発揮する選手で、都大会、関東大会とも自己記録が上の選手に勝っています。将来が楽しみな選手です」と、青柳監督が今後を期待する選手だ。
だが寺内不在のため後半区間が手薄になり、５区で４位に後退。６区終了時には３位チームとの差は11秒（距離にすると50ｍ強）に開き、５位チームには11秒差まで追い上げられていた。その状況で頑張ったのが、都大会の２区から７区（５km）に回った林だった。区間賞選手と３秒差の区間２位で、３位争いに３秒差で競り勝つ健闘だった。
●全国23位だった昨年より5000ｍ平均タイムが８秒アップ
拓大一高が関東大会で出した２時間05分36秒は、今年の記録では全国13位。チーム内上位７人の5000ｍ平均タイムは14分28秒76で全国20位。どちらの記録も目安にはなるが、全国高校駅伝の順位は記録通りにはならない。拓大一高の選手たちは“２時間04分59秒で８位”を目標に掲げている。
青柳監督は次のようにレースを展望する。
「全国の１区はすごい選手が多いので、耐える区間になります。３、４区で順位を上げて、５、６、７区で１つでも上に進出する。その展開しかないと思います」
１区は木村か寺内になる。「木村はもともと能力の高い選手。都大会の失敗で競技に取り組む姿勢が改まった」（青柳監督）という。「寺内は判断力がある選手」。１区の場合、ハイペースで進むことが予想される先頭との距離をはかりながら、ギリギリの戦いができるだろう。
３区が予想される山田が、全国の強豪と走ることで潜在能力が発揮されれば、20位以内に進出する展開も十分期待できる。４区が寺内なら「トータルで力を出せる選手」なだけに、区間の後半で順位を上げていくだろう。木村の場合は早めに前の選手に追いつく走りになるだろうか。
昨年の拓大一高は２時間07分32秒で23位。３年生５人がメンバー入りし、今年の在校生では木村が２区で区間26位、寺内が３区で区間30位だった。今季は戦力ダウンが予想されたことに加え、メインの練習場所だったトラックが改修工事のため半年間使用できなかった。近くの大学のトラックを週に２回借りるなど、練習場所を探しながらの強化になった。
苦戦が予想されたが、寺内、木村が中心選手に相応しい走りを見せ、１年生の山田も主力に成長した。5000ｍ平均タイムも昨年の14分36秒24から８秒近く短縮している。間違いなく底上げが進んだ１年だった。主力３人には区間10位台、良ければヒト桁順位を期待できるが、全体で見れば拓大一高は総合力で勝負をするチームだろう。
前回は１区から22～24位を走り続けて、23位という順位だった。今年は後半で少しずつ順位を上げていくタスキリレーが期待できる。「生徒たちには東京都代表として走ることを通して成長しよう、と話しています」。その気持ちが、苦しい場面でも力になる。
【執筆者】 ： 寺田辰朗 【執筆者のWEBサイト】 ： 寺田的陸上競技ＷＥＢ
