■5日目(9月17日)
鵜澤が男子200m予選に登場。上位通過で準決勝のシードレーン確保へ
男子200mの鵜澤飛羽(JAL)がこの日の20:15開始の予選に登場する。一昨年のブダペスト世界陸上、昨年のパリ五輪ともに準決勝まで進出した選手で、今季は20秒11の日本歴代3位タイと自己記録を更新している。予選は間違いなく通過するが、準決勝でシードレーンを取るためにも1~2位で通過し、準決勝で勝負するために良い流れを作りたい。
■6日目(9月18日)
予選で44秒33の日本新をマークした中島に、91年東京大会の高野以来、34年ぶりに男子400m決勝を走る可能性
中島佑気ジョセフ(富士通)が大会2日目(14日)の男子400m予選で44秒33と、佐藤拳太郎(富士通)が23年ブダペスト世界陸上で出した44秒77の日本記録を大きく更新した。本記事は準決勝前に書いているが、ブダペスト大会は44秒70、22年オレゴン大会は45秒02が準決勝落ちした最高記録。中島が準決勝を通過している可能性は高い。
この日の決勝(22:10)を中島が走れば、男子400mでは91年東京世界陸上の高野進(7位入賞)以来の快挙となる。8月の取材で中島は「決勝に行って初めて、偉大な高野先生に少し肩を並べられます。今の世界陸上でもう一度、違う選手が400mの決勝に行くことに価値があると思うので、しっかり受け継いでいきたい」と話していた。
91年の高野と同じように、中島が国立競技場を熱狂させる。
男子200mの鵜澤飛羽(JAL)も、この日の準決勝(21:02)の結果次第で決勝進出が決まる。鵜澤の20秒11は今季世界リスト31位タイだが、米国選手が12人いるので、一国3人カウントなら順位は上がる。何より今季の鵜澤は、20秒11~13を4レースで出し、追い風2.1mで参考記録にはなったが、20秒05でも走っている。この安定性は世界で戦う時にも武器になる。
22年オレゴン世界陸上の準決勝落ちした最高タイムは20秒10、23年ブダペスト世界陸上では20秒22だった。決勝進出の可能性は普段の力を出して五分五分、本番で自己新を出せればかなりの高確率で決勝に進出できる。
19:05開始の女子5000m予選には、10000mで6位入賞の廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)が、19:15開始の女子走高跳予選には東京高出身の髙橋渚(センコー)が出場する。
世界大会の長距離種目はまれにハイペースになることもあるが、スローペースになることが多い。その場合は勝負強さがより重要になる。どこで勝負を仕掛けるか、先に勝負に行って落ちてきた選手を拾っていくか。10000mの入賞争いがそうだったように、5000m予選も最後まで目が離せない。
女子走高跳予選の通過は、オレゴン大会は1m90、ブダペスト大会は1m89だった。ただその高さを跳んでも落ちている選手が多数いる。つまり1m90前後の高さまで、ノーミスで跳べば通過できる可能性が高くなる。
髙橋は海外の試合でも自己記録を跳ぶなど、どんな試合環境でも力を発揮してきた。今季の屋外シーズンは少し記録が落ちていた時期があったが、地元の声援を力に本来の力を発揮すれば予選通過の可能性はある。
■7日目(9月19日)
女子やり投予選にブダペスト世界陸上&パリ五輪金メダルの北口が登場。注目は予選通過記録
女子やり投予選のスタートリストが16日朝の時点でまだ発表されていない。19:30開始のA組か21:00開始のB組か、どちらになるかは未定だが、北口榛花(JAL)の予選通過記録が注目される。一昨年のブダペスト世界陸上は予選を63m27で通過し、決勝は66m73で女子フィールド種目初の世界一に輝いた。昨年のパリ五輪は予選を62m58で通過し、決勝は65m80で女子フィールド種目初の五輪金メダルを獲得した。
しかし今季は、過去2シーズンとは状況が異なる。6月のヨーロッパ遠征中に右ひじの痛みが出たため、7月の日本選手権以降の試合をキャンセルした。8月20日のダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会で復帰したが、50m93の10位。8日後のダイヤモンドリーグ最終戦(チューリッヒ)では60m72(6位)と記録は上向きだが、例年と同じではない。
北口は練習では、試合のような距離が出ないタイプ。試合を重ねて技術の精度を上げていく。今回の予選の記録が仮にブダペスト、パリより悪くなったとしても、8日目の決勝の記録を上げていくための重要なステップになる。
男子200m決勝(22:06)に鵜澤飛羽(JAL)が進出していれば、03年パリ大会の末續慎吾(銅メダル)、17年ロンドン大会のサニブラウン・アブデル・ハキーム(7位)に続き、世界陸上3人目の快挙。国立競技場の大歓声が鵜澤の背中を押すはずだ。
男子5000m予選(20:00)には森凪也(Honda)が出場する。この種目では世界陸上予選を通過した日本人選手はまだいない。勝負強さが特徴の森が、その壁を突破できるかどうかに注目したい。
【執筆者】 : 寺田辰朗 【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB
