今年の中学生日本一を決める全日本中学選手権が8月17~20日、沖縄県総合運動公園陸上競技場(沖縄市)で行われる。東京勢は直前の関東中学(8月7、8日・栃木県カンセキスタジアム)で、全国大会とは一部実施種目が異なるが6種目で優勝。チーム東京として勢いが増す結果を出した。優勝争いに加わりそうな選手、上位入賞が期待できる選手たちを紹介する。
●関東中学に好記録で優勝した山嵜と西大
関東中学で全国トップレベルの記録を出して優勝したのが、男子400mの山嵜俐空(堺3年)と走幅跳の西大奏良(つくし野3年)だ。
山嵜の優勝記録は49秒19。気象条件が違うので単純比較はできないが、昨年の全日本中学選手権優勝記録を上回った。富山・牧野中3年の金子斐音が、北信越中学で48秒48(中学歴代5位タイ)を出して一歩リードしているが、山嵜も優勝争いに加わる力がありそうだ。
西大は6m91(-0.3)と関東中学で自己記録を23cmも更新した。今季6m90台を跳んでいる中学生は多いが、中学リスト1位は6m96で西大と5cmしか差がない。西大の記録が向かい風だったことを考えると、優勝候補の1人といえる。
女子走幅跳の新坂空亜(日野一3年)は7月12日の東京都中学総体で5m84(+0.7)をマークし、7月末時点の今季中学リストで1位に。その後の近畿中学で和歌山・河北中の3年の小畑千愛が5m89を出ているが、新坂との差は西大と同じで5cmと小さい。優勝候補の一角と言って間違いない。
女子短距離の新井凛生(ペンタスAC2年)とバログン・イズミ(千住ジュニア2年)も優勝争いに加わりそうな勢いがある。
新井は昨年の全日本中学選手権で、1年生ながら6位と、1&2年生では最高順位の成績だった。昨年7月には12秒04(+1.8)の、中学1年歴代3位もマークした。今季のシーズンベストは12秒02(+1.2)だが、向かい風の大会が多く記録を出すチャンスが少なかった。東京都中学総体の2年100m優勝時の12秒14は、向かい風3.0m。11秒8台の力があると推測していい。全日本中学選手権で優勝争いに加わる可能性は十分ある。
その前に注目しないといけないのが、新井の出場種目である。新井は200mと四種競技でも、7月末時点の今季中学リストで10位以内に入っていた。全日本中学選手権はリレーを除き1種目しか出場することができない。混成競技を行っていることも、自身の強さの背景だと新井は自己分析していた。
バログン・イズミ(千住ジュニア2年)は今季、100mで11秒93(+1.8)の中学2年歴代5位、200mで24秒71の中学2年歴代6位をマークした。7月末の中学リストで11秒8~9台は6人、24秒7台は7人がマークしている。バログンがどちらの種目に出場するかわからないが、どちらの種目でも優勝争いに加わる可能性もあれば、下位入賞にとどまる可能性もある。
●ダブル入賞の可能性がある女子100mMHと男子800m
女子100mと200mも新井とバログンが同じ種目に出場すれば、東京勢のダブル入賞が有力となるが、女子100mMHでもその可能性がある。門田怜奈(第二砂町3年)と田中柚南(松江一3年)、東京のハードラー2人が今季ハイレベルの好勝負を展開している。7月12日の東京都中学総体では田中が13秒74(+0.7)の大会新で優勝し、門田が13秒84で2位。同26日の中学通信東京都大会では門田が13秒72(-1.5)の大会新で優勝し、田中が13秒94で2位。8月8日の関東中学でも門田が13秒75(+1.1)で優勝し、田中が13秒93で東京勢がワンツー・フィニッシュを飾った。
この種目は福岡・太宰府東3年の今村好花が、昨年の全日本中学選手権優勝者で、今年7月には13秒28(+1.5)と中学記録を大きく更新した。今村が絶対的な優勝候補だが、向かい風1.5mの通信大会で13秒7台を出した門田にも、中学生で過去3人しかいない13秒50未満のタイムを期待できる。その門田に勝ったことのある田中にも、2位争いに加わるチャンスはある。東京勢ダブル入賞の確率は高い。
男子800mは森元大剛(足立十三3年)が7月13日の東京都中学総体に1分56秒02の大会新で優勝。6月には1分55秒72と、7月末時点の今季中学リスト5位の好記録をマークした。関東中学では5位と敗れたが、そのレースでは曽田未来(八王子一3年)が1分55秒96で2位と健闘した。男子800mも東京勢ダブル入賞の可能性もある。
男子3000mは群雄割拠の種目で入賞するのも簡単ではない。7月末時点の今季中学リストで7人の8分30秒台がいるが、溝部幸太(南千住二3年)が8分41秒60で8位につけている。入賞候補と言っていい。その溝部が7月26日の中学通信東京都大会に8分50秒82の大会新で優勝したが、2位の伊藤洋樹(鹿骨3年)は関東中学1500mに優勝した。3位の今泉泰司(城北AC2年)は7月に、8分42秒36の今季中学10位記録で走っている。
長距離種目は持ちタイムだけでは、大舞台の順位は決まらない。東京勢の複数入賞の可能性もゼロではない。
女子1500mの高橋希ノ葉(吾妻立花2年)も7月に4分32秒22と、7月末の今季中学リストで5位の好タイムを出した。その高橋に中学通信東京都大会で勝った坂田杏(平井3年)は、関東中学でも3位と健闘した。入賞候補が2人いる種目であるのは間違いない。
●フィールド選手たちの入賞は本番の強さ次第
最後にフィールド種目の入賞候補を紹介していく。
男子走高跳ではザリンデラクト・アスラン(西葛西3年)が5月に1m88を跳んだ。7月末の今季中学リストで11番目だが、本番でその記録を跳べば、昨年のレベルなら入賞できる。だが、今季リストで1m88以上を跳んでいる選手は31人になる。これだけ大混戦の種目で入賞したときは、極めて高く評価すべきだろう。
女子走高跳では高橋秋音(霞台3年)が3月に1m61をマーク。その後も複数試合で1m60を跳んでいる。女子も今季だけで、1m60以上を跳んでいる選手が50人近くいる。本番で1m60の次の高さを跳べば入賞は確実だが、1m60までノーミスでクリアしたときも入賞の可能性がある。安定感のある高橋にはそこを期待できる。
男子棒高跳では大石泰史(深川五3年)が今季、4m00を複数試合で跳んでいる。その高さでは全日本中学選手権での入賞は難しいが、中学生の棒高跳は、一気に20cmの自己記録更新もよくあること。本番でそれを成し遂げれば、入賞も不可能ではない。
メダル(3位以内)や入賞も大事だが、大舞台で自己記録を更新すれば、その後の成長につながるはずだ。1人でも多くの中学生が自己記録を更新してほしい。
【執筆者】 : 寺田辰朗 【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB