高校日本一を決めるインターハイは7月25~29日、広島・ホットスタッフフィールド広島(広島広域公園陸上競技場)で開催される。今年も東京勢が多くの種目で躍動する。男子110 mHの古賀ジェレミー(東京高3年)は、2連覇と自身の高校記録更新を目指す。男子400mの小澤耀平(城西高3年)は優勝と、自身の持つ東京都高校記録更新が期待できる。その他にも東京都高校記録更新で上位入賞が可能になる種目が多い。東京勢の活躍を日付毎に展望していく。

■Day1(7月25日):東京勢入賞者第1号は?■
初日の決勝種目は男女ハンマー投が行われる。
東京勢は男子の北翔太(保善高3年)が入賞者第1号になる候補。南関東予選優勝時の61m89が、今季高校リスト4位。3位の選手は63m15なので3位以内も十分に狙える。だが北からリスト7位選手の4人が、61m台のシーズンベストを持つ。3位以内の可能性もあるが、少し失敗すれば入賞(8位)できないこともあるかもしれない。大舞台での勝負強さが勝敗を分ける。
■Day2(7月26日):男子400mの小澤が優勝候補■
2日目の東京勢では、男子400mの小澤耀平(城西高3年)が優勝候補に挙げられている。昨年のインターハイ8位入賞者で、2年生以下では2番目の順位だった。10月の国スポ少年A300mでも8位と、2つの全国大会で入賞した。
今季も成長した姿を見せ、6月のインターハイ南関東予選に46秒60で優勝。このタイムは今季高校最高記録であり、井上大地(当時東京高)が16年にマークした東京都高校記録を0.31秒も更新した。また昨年のインターハイ優勝者の菊田響生(法政二高、現法大)が、前回大会でマークした大会記録も更新した。
強敵は久保拓己(滝川二高3年・兵庫)で、昨年のインターハイ4位と2年生以下で最高順位を占めた選手。昨年のシーズンベストは46秒69、今季も46秒92をマークし、近畿予選は2連勝した。橋本頼弥(鵬学園高3年・石川)も北信越予選を46秒79の大会新で走り、2位に1秒近い大差をつける強さを見せた。
かなりの激戦が予想され、優勝するには46秒台前半のタイムが必要になりそうだ。
男子やり投ではボンゴーラン・ジョセフ瑛(堀越高3年)が63m48で今季高校10位、上田惺(駒場高2年)が63m05で同11位。今季高校リスト3位の選手は65m51ということを考えると、2人とも本番のパフォーマンス次第で3位以内も不可能ではない。
男子八種競技では手島啓汰(東京高3年)が、南関東予選で2位に入ったときの5747点で今季高校6位につけている。その時優勝した宮下輝一(市船橋高3年・千葉)が6272点の高校新をマークした。宮下とは差があるが、今季高校2位選手は5811点。インターハイ本番の頑張り次第で逆転できる。
■Day3(7月27日):5000mWの井上と砲丸投の福宮、東京高コンビの上位入賞なるか■
3日目の東京勢は上位入賞候補が多く登場する。
男子400 mHの織田大輔(日大櫻丘高3年)は南関東予選で、51秒47(2位)の今季高校7位記録をマークした。酒井大輔(四学香川西高3年・香川)が50秒72とただ1人50秒台を出しているが、今季高校2位から14位までは51秒台と混戦模様を呈している種目。3位以内の可能性も十分ある。
前日の八種競技の手島に続き、男子5000mWの井上隼太朗(東京高3年)、砲丸投の福宮佳潤(東京高2年)と東京高勢が上位入賞を目指す。
井上は昨年のインターハイ7位と、2年生以下では2番目の順位に入った。今年2月のU20選抜競歩10kmWでも4位と実績を残しているが、強敵も多い。昨年のインターハイ2位の山田大智(西脇工高3年・兵庫)、U20選抜競歩2位の井上俊弥(長野日大高3年・長野)、南関東予選で井上を破って優勝した及川集雅(保土ケ谷高3年・神奈川)らだ。
競歩は勝負どころで警告を受けたら、ペースアップができなくなってしまう。激戦になるほど、歩型が勝敗を左右する。
男子砲丸投には、最終日の円盤投の優勝候補でもある福宮が出場する。この種目では南関東予選を16m20で制し、今季高校リストで5位につけている。今季高校1位の選手は18m台で差が大きいが、「上手くいって2位、悪くても4位以内を」と、東京高の小林隆雄監督は期待する。
女子円盤投にも村山ジョイ希望(東京高1年)と、東京高期待の1年生が出場する。5月のインターハイ東京都予選で43m35の自己新を投げ、6月の南関東予選も41m19で優勝した。そして7月には44m20と、高1歴代8位まで記録を伸ばしている。上り調子なだけに45m54の東京都高校記録更新や、3位以内も期待できる。
■Day4(7月28日):女子走高跳のルーキー谷口の活躍は?■
4日目にはもう1人の期待の1年生、女子走高跳の谷口天音(白梅学園高1年)が登場する。4月には1m70と、今季高校リスト5位タイの高さをクリア。南関東予選は1m67の2位だったが、昨年のインターハイ優勝者の鴨田るな(東海大相模高2年・神奈川)に競り勝った。
昨年のインターハイは優勝した鴨田をはじめ、1年生(今年の2年生)が3人入賞した。また南関東予選を制した倉田心夏(八千代松陰高3年・千葉)も、1m74の今季高校最高を跳んでいる。11人が今年1m70以上を跳んでいる種目で混戦が予想されるが、谷口にも3位以内の可能性はある。
4日目には女子七種競技の後半3種目が行われる。この種目では髙橋怜美(明大八王子高3年)が南関東予選で4729点をマーク。順位は3位だったが、この種目は南関東地区のレベルが高く、今季高校リストで髙橋は4位につけている。3位の選手とは300点以上の差があるが、大幅な自己記録更新が可能な種目。3位以内を目標にできる。
■Day5(7月29日):110 mHの古賀を筆頭に東京勢怒濤の入賞ラッシュへ■
最終日は東京勢の入賞ラッシュが期待できる。中でも110 mHの古賀ジェレミー(東京高3年)は、自身の高校記録(13秒45)を更新しての2連勝が期待されている。
古賀は昨年のインターハイ優勝時に13秒59(-0.7)の高校新をマーク。今季もインターハイ東京都予選で13秒59(+0.3)の高校タイ、南関東予選では準決勝13秒58(-0.1)、決勝13秒45(+0.1)と高校新を連発した。
日本選手権ではシニアの代表クラスの選手たちに混じって、13秒52の5位(+0.8)。2台目まではトップを走ったが、3台目から右隣の野本周成(愛媛競技力本部)に先行され、5台目でハードルにぶつけてリズムが狂った。「3位以内を目標にしていました。少ない可能性でしたが、通用する部分もありましたし、シニア選手と走るプレッシャーもあったのでしょう。普段は引っかけないのにミスをしてしまいました」(小林監督)
13秒23で優勝した泉谷駿介(住友電工)と2位の野本が、東京2025世界陸上の代表に内定したレース。可能性が低いことは承知の上で、古賀は本気で代表を狙っていった。その経験が次に代表を狙うときに間違いなく役に立つ。高校生の大会に敵は見当たらず、「自己新で優勝」(小林監督)が目標になる。
男子走高跳では清水怜修(明星学園高2年)と星海成(板橋高2年)、東京勢のダブル入賞が期待できる。2人ともシーズンベストは2m07で、今季高校リストの5位タイにつけている。清水は23年の全日中優勝者で、今年の南関東予選も優勝するなど勝負強さがある。星は今年自己記録を6cm更新、東京都予選では清水に6cm差で快勝した。
3位以内に入るためには2m10以上をクリアしたい。
男子3000mSCでは江藤大輝(國學院久我山高3年)に、東京都高校記録(8分57秒93)更新を期待したい。箱根駅伝でも活躍した櫻井勇樹(当時早稲田実高)が1997年にマークした、トラック種目では最古の東京都高校記録だ。江藤は南関東予選で9分03秒14の4位、今季高校リストで10位につけている。東京都高校記録を更新すれば入賞は確実だろう。
女子三段跳の酒井珂璃那(八王子高2年)は南関東予選に12m02(-2.0)で優勝。5月には12m23(+1.1)の今季高校リスト6位を跳躍した。東京都高校記録は12m48。自己記録との差は25cmあるが、南関東予選でも向かい風が強かったことを考えれば目標にできる。
男子円盤投は砲丸投でも紹介した福宮佳潤(東京高2年)に、優勝と東京都高校記録(52m51)更新が期待できる。
福宮は4月に51m28の今季高校リスト2位をマークしたが、5月の東京都予選は45m29(2位)、6月の南関東予選は44m23(4位)と投げを崩してしまった。しかし7月12日の東京都高校選抜では46m80(2位)と記録が上向いた。「練習では50mを投げていた頃に戻って来ました」と小林監督。
南関東予選優勝の原田颯輔(東京高3年)も今季高校リスト9位の47m14を投げている。ダブル入賞で大量得点を獲得すれば、東京高が最終日で男子総合優勝争いに加わる可能性がある。
【執筆者】 : 寺田辰朗 【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB