【インターハイ南関東予選展望】男子110 mHの古賀に高校新の可能性。全国大会でも上位が期待できる東京勢は? 激戦となる種目は?

インターハイ南関東予選が6月13~15日に、栃木県宇都宮市のカンセキスタジアムとちぎで開催される。千葉、東京、山梨、神奈川の1都3県の予選を勝ち抜いた選手たちが、7月25日から広島県で行われるインターハイ全国大会の出場権(一部種目を除き各種目6人)を争う。高校生たちにとって、全国大会への最終関門となる。最大の注目は男子110mHの古賀ジェレミー(東京高3年)だ。インターハイ東京予選では13秒59(+0.3)と、自身が昨年出した高校記録タイをマーク。南関東予選では高校新記録が期待されている。全国大会での活躍が期待できる東京都選手と、他の南関東3県勢との激戦が予想される種目を紹介する。

●故障明けのシーズン初戦で高校タイ記録を出せた理由は?

 東京都予選(5月18日)の古賀の高校タイ記録には驚かされた。自己タイ記録と考えれば不思議なことではないが、東京都予選の展望記事でも紹介したように、古賀は3月にリード脚の左ひざを傷め、半月ほど本格的な練習ができなかった。東京都予選が故障明け最初の試合で、屋外シーズン初戦だった。

 東京高の小林隆雄監督は、いきなり高校記録が出た理由は「わからない」と前置きをした上で、以下のような可能性を示した。

「6月8日に100 mで10秒77の自己新を、向かい風3m以上の条件で出しました。スプリント能力が上がっていて、それに伴ってハードル技術も向上したのでしょう。ハードル練習を始めたのはゴールデンウィーク前で、東京都予選は14秒を切れるかどうか、という想定をしていました。予選(13秒89・+0.7)、準決勝(13秒90・-2.4)が良い練習になって、昨年のベストに近い状態になったのかもしれません」

 南関東予選は「無事に通過する」ことが一番の目標になる。「記録的にはそこまで望んでいませんが、自己記録(=高校記録)は上回ってくれるでしょう」(小林監督)

 インターハイ路線だけでなく、日本代表入りも今季の目標の1つ。7月上旬に行われる日本選手権で「3位以内も難しくないのかもしれない」という手応えを得られた。9月開催の東京2025世界陸上参加標準記録は13秒27。故障明けのシーズン初戦で13秒59なら、“あり得ない話”ではなくなってきた。

●男子400mの小澤も全国の優勝候補。女子円盤投に大物ルーキーの村山

 古賀以外にも全国大会で、優勝争いや入賞が期待できる東京勢は多い。

 男子では400mの小澤耀平(城西高3年)が47秒19、5000mWの井上隼太朗(東京高3年)が20分58秒86(大会新)、走高跳の星海成(都板橋高2年)が2m07、砲丸投の福宮佳潤(東京高2年)が16m13(大会新)、円盤投の三浦正人(保善高2年)が46m70で優勝した。

 小澤はインターハイ8位、井上はインターハイ7位、星はU18陸上7位タイ、福宮はU18陸上円盤投優勝、三浦はU16陸上2位と、昨年の全国大会で入賞した実績を持つ。インターハイでは優勝争いが可能な選手たちだ。

 特に福宮は4月に51m28と今季高校2位の記録をマーク。小林監督は「高校記録(58m38)を狙える選手」と期待している。東京都大会では2回ファウルと危ない橋を渡り、45m29で三浦に敗れて2位。技術的に崩れているのか、ケガの影響があるのか、「南関東は通過だけを目指す」と小林監督。インターハイ本番までに間に合わせるスタンスだ。

 女子では走高跳の谷口天音(白梅学園高1年)が 1m64、三段跳の酒井珂璃那(八王子高2年)が12m23(+1.1。大会新)、円盤投の村山ジョイ希望(東京高1年)が43m35(大会新)で優勝した。谷口と村山は1年生。インターハイ本番までに成長し、優勝争いに加わる可能性を持つ。

 村山について小林監督は「体格に恵まれたパワーヒッター。技術的に不安もありますが、当たれば大きい」と南関東予選も期待する。

●男子100m、女子200mは東京vs.千葉の激戦に

 レベルが高く、激しい争いになりそうな種目も多い。

 男子100mでは大坂千広(明大中野高3年)が東京勢の期待の一番手。昨年のU18陸上5位入賞者で、東京都予選は向かい風(0.8m)だったこともあり10秒66にとどまったが、順当に優勝した。

 この種目は千葉県勢も強力で、23年に中学記録の10秒54(現中学歴代2位)で走った片山瑛太(市船橋高2年)は、昨年のU18陸上で大坂より1つ上の4位に入った。その片山を千葉県予選で破って優勝したのが吉田吏玖(姉崎高3年)だ。大坂と千葉県コンビの優勝争いは、かなりの激戦になるのではないか。

 男子5000mWは東京の井上と、昨年の国スポ少年共通5位の及川集雅(神奈川・保土ケ谷高3年)が激突する。井上は前述のように東京都予選で20分58秒86(大会新)で歩いたが、及川の神奈川県予選は20分27秒31(大会新)だった。

 東京高の小林監督は「東京都予選の井上は独歩で、途中まで20分30秒ペースでした。及川選手と競り合えば記録は上がる」と期待する。

 女子200mも男子100mと同様、東京vs.千葉の構図となっている。東京都予選はケリー瑛梨花(東京高3年)が24秒78(-0.5)で優勝。ケリーは100mも11秒96(+1.4)で勝って短距離個人2冠を達成した。千葉県予選はバログン・ハル(市川高2年)が24秒59(-1.7)で優勝。400mも55秒24で勝って2冠。

 全国大会の実績では昨年インターハイ6位、国スポ少年B2位のハルが勝るが、ケリーは東京都予選100mで自身初の11秒台を出したことで、殻を破る可能性があると東京高・小林監督は期待する。100m&200m型のケリーがおそらく先行するだろう。200m&400m型のハルがレース終盤、どこまで追い上げられるか。

 女子では100mHも面白い。

 東京都予選は廣田ひかり(東京高2年)が14秒16(-2.2)で、神奈川県予選は江口美玲(東海大相模高2年)が13秒86(-1.4)で優勝。そして千葉県予選は坂田涼音(渋谷学園幕張高3年)と髙橋結愛(市船橋高3年)が、13秒76(-0.4)で同着優勝した。

 坂田が昨年のU18陸上で4位と、実績ではややリードしている。2年生2人は昨年の国スポ少年Bで、廣田が4位で江口が5位。県予選のタイムを見ると千葉県コンビが優位に見えるが、廣田と江口も風に恵まれれば13秒7台は出せると思われる。

 全国で勝負をするためには13秒5を切って行く必要がある。南関東の激戦を、そのためのステップにしたい。

            ◇

 古賀ジェレミーを中心に、東京高が対抗得点でも大量得点を獲得しそうだ。同高はケンブリッジ飛鳥(リオ五輪4×100mリレー4走で銀メダル)らを中心に、2011年インターハイで総合優勝した。南関東予選を60~80点台で通過すれば、インターハイ全国大会でも優勝の可能性が大きくなる。

 【執筆者】 : 寺田辰朗          【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB