東京選手権は4月24~26日に駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で行われた。女子円盤投は齋藤真希(太平電業)が1投目に53m51の大会新を投げて優勝。23年ブダペスト世界陸上代表だった貫禄を見せた。辻川美乃利(内田洋行AC)は5投目に50m54と、自身の大会記録(51m38・21年)に迫る投てきを見せたが齋藤に及ばず2位。連勝記録は「5」でストップしたが、19年にマークした自己記録(54m46=日本歴代7位)更新に意欲を見せた。

●齋藤の手応えと浮き彫りになった課題
昨年の太平電業入社を機に東京陸協登録選手となった齋藤は、24年に58m47の日本歴代7位を投げている。昨年4月の兵庫リレーカーニバルで投げた57m65で、東京記録保持者にもなった。日本記録(60m72)保持者の郡菜々佳(ニコニコのり)に次いで、2人目の60mスローワーとなることが期待されている選手だ。
円盤投の記録は風の影響を受けやすい。優勝記録の53m51は、自己記録と約5m差があるが悪い記録ではない。ただ、好記録とも言えない。齋藤自身「投げ自体がまとまりきらなかったです。ターンが全体的に途切れている感じがありました」と課題を口にした。それでも、「パワーポジションから振りに行くところは、しっかりできたかな」と感じられた点もあった。
昨年は4月に57m65を投げた後に背中を痛め、「シーズン中治りきらず、ずっと続いてしまった」ために記録を伸ばせなかった。今年は逆に、ターンがまとまっていないため4月の記録は昨年より低いが、そこができれば記録を伸ばしていける手応えがある。
「自己ベストと、60mという目標を掲げて頑張ります」
アジア大会派遣設定記録は、日本記録と同じ60m72に定められている。その記録を日本陸連が指定するアジア大会参考競技会で出し、日本選手権に優勝すれば代表に内定する。派遣設定記録を破れなかった場合でも、アジア大会で入賞が期待できると判断されれば、代表に選ばれる可能性はある。
「代表を狙っていきます」
齋藤は力強く言い切った。
●ウェイトトレーニングを減らした辻川
大会記録保持者の辻川は、昨年まで川口紅音(ウィザス)と熾烈な戦いを繰り返しながら、21年から勝ち続けてきた。それが今年は齋藤の参戦で、連勝が「5」でストップした。
記録が上の齋藤との戦いでも「私のやるべきことに変わりはありません」と、力んでしまったわけではない。それよりも「9年ぶりに(1、2投目の)2回連続ファウルをしてしまいました。前半3回の試技でしっかり投げる準備をしてこなかった」と反省する。
3回目で49m72を投げてベストエイトに残ったが、5回目に50m54と記録を伸ばすのが精一杯だった。
今シーズンは「自己ベスト更新を、今年こそしないと」と強い気持ちで臨んでいる。自己記録は19年にマークした54m46(日本歴代7位)である。過去3年間は東京選手権で51m台と、良いシーズンのスタートを切りながら自己記録に届かなかった。
しかし今年は、例年以上の手応えがある。ヘルニアを発症し「ウェイトトレーニングを痛みが出ないやり方に変更した」ところ、明らかに故障をしなくなった。
「今までがやり過ぎだったとわかりました。ウェイトトレーニングの量を少し減らして、その分、技術に割く時間が増えて、投げの技術自体は安定してきました。意識しなくてもできることが増えています。年齢的にも練習量の調整をするタイミングだったのかもしれません」
東京選手権の6連勝は逃した辻川だが、自己記録の7年ぶりの更新ができたら充実のシーズンとなる。

●日本の女子円盤投の底上げを東京から
齋藤は今も東海大を練習拠点にしているが、東海大大学院から昨年太平電業に入社した。実業団チームのサポートを得た環境でやり遂げたいことは、「日本記録の更新と技術力の向上」だという。
「円盤投を極めていって、社内の皆さんはもちろん、多くの人たちから応援される選手になりたいな、と思っています」
辻川は齋藤の参戦について「私のやるべきことは変わらない」と言った後に、次のように続けていた。
「淡々と自分超えを目指してやった結果、(円盤投選手)全員に勝てたらいいのですが、全員が強くならないと、世界で通用するようになりません。郡さん、齋藤さんたち実業団トップ選手たちでも、所属が変わられたりしながらも頑張っています。女子円盤投全体の層を厚くして、レベルを上げていきたいと思っています」
辻川は表彰式後に若い選手たちからアドバイスを求められると、技術のポイントを実演しながら熱心に説明していた(写真)。辻川講師による円盤投教室が、いきなり始まったかのようなシーンだった。
「私の持っているものでよければ、何も隠すものはありませんし、還元していきます。みんなで強くなっていけたら、と思っています」
東京の女子円盤投選手たちの取り組みが、世界との差を縮めていく。
【執筆者】 : 寺田辰朗 【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB

