【東京選手権2026レポート①】男子400mHは児玉が49秒51の大会新。上位3選手に偶然とは思えない“つながり”

 東京選手権は4月24~26日に駒沢オリンピック公園総合運動場で行われた。レベルが高かったのが男子400mHで、23年ブダペスト世界陸上代表だった児玉悠作(ノジマT&FC)が、49秒51の大会新記録で優勝。2位の岡村州紘(長野県信用組合)も49秒84と、従来の大会記録を上回った。3位に大会記録(50秒08=20年)を持っていた山本竜大(SEKI A.C.)が続いた。この3人が1~3位を占めたことには、偶然とは思えないような“つながり”があった。

●ブダペスト世界陸上代表だった児玉は48秒50突破に意欲

 代表経験者の児玉が強さを見せた。23年に48秒77台をマークし、ブダペスト世界陸上とバンコク・アジア選手権、杭州アジア大会に出場した。特にアジア選手権は、48秒96のセカンド記録で2位という健闘だった。

 優勝記録は49秒51の大会新。混成競技以外はアジア大会(9月名古屋開催)選考の参考競技会に指定されていないが、アジア大会派遣設定記録が49秒46に設定されていることを考えると、この種目はレベルが高かった。

 児玉は東京選手権出場の目的を「GP(400mHは5月3日の静岡国際)前に1本走って刺激を入れること」だったと言う。「練習ではレース後半局面の状態を作りにくいので、ここで経験をしておくことがGPにつながります。予選は50秒09で1本目から出す能力が足りませんでしたが、決勝は予選前半のリズムが遅かったことを修正して49秒台中盤を出すことができました。400mHのシーズン初戦としては満足しています」

 24年と25年の2シーズンは、「ケガが重なった」こともあり48秒台を出すことができていなかった。それに比べ今季は、ここまで順調に来ている。1週間前には400mで46秒61の自己新もマークした。

「それがハードルにも結びついて、初戦でこのタイムで走ることができたので、体が動いてきたら48秒台は出ると思います。アジア大会にしっかり向かっていけるように、日本選手権をしっかり勝ちきれるように、GPも含めて戦っていきたい。記録的には48秒50を切って、行く行くは47秒台を目指して行きたいと思っています」

 児玉の4月のタイムは、手元の資料では23年が50秒27、24年が50秒54、25年が49秒99だった。今年の東京選手権は、3年ぶりの代表復帰に向けて幸先の良いスタートになった。

●3選手とも新たなインターバルの歩数に挑戦中

 児玉の23年4月のタイムは東京選手権で、そのときは山本に0.07秒差で敗れて2位だった。「今回、山本さんの大会記録は特に意識はしていませんでしたが、3年前に小差で負けていたので優勝して、大会記録も名前も残せたのはよかったです」

 2位の岡村は児玉とは同学年で、同じ長野県出身。高校時代は勝ったり負けたりしていた。児玉は法大に、岡村は日大に進んだが、2人とも学生時代に突き抜けた戦績は残せなかった。しかし実業団1年目に児玉が一気に48秒台に記録を伸ばし、代表にも入った。岡村も大学院2年目に49秒61、長野県信用組合に入った昨年、49秒24まで記録を伸ばした。

 岡村は児玉との対決について次のように話した。

「今回49秒台でまとめられたのは御の字ですが、児玉選手に後半追いつくことができず、勝ちきるレースができませんでした。静岡国際で上位に入れば(5月17日の)ゴールデングランプリに出られます。そして(6月の)日本選手権に勝ってアジア大会代表に出場することが目標です」

 岡村は山本ともつながりがあった。日大1年時(19年)に山本が4年生で、キャプテンだった。3年時に関東、日本両インカレに優勝した山本は、憧れの存在だった。現在長野を拠点とする岡村が、今大会出場を決めたのは山本が出場するからだった。

 山本の49秒12の自己記録は6年前で、仕事も「フルタイムに近い」練習環境だが、「49秒を切ってアジア大会候補になる」と、代表への意欲は衰えていない。インターバルの歩数は、自己記録を出した頃は5台目まで14歩だったが、今は7台目まで14歩で行けるようになっている。48秒台の可能性は十分ある。

 歩数ということでは、児玉は昨年の日本選手権から13歩を5台目までと、1台増やし始めた。「今日は逆脚でつなぐ(6台目の)14歩のところが間延びしてしまいました。レース展開的にはそこが課題です。5台目までの13歩が馴染んで、そこの流れが上手く行けば、(48秒台に入るだけでなく)もっと可能性は上がります」

 そして岡村も3年前から「6台目まで13歩」に挑戦している。長身で47秒99を持つ豊田兼(セイコー)を除けば、それができる選手は少ない。

 偶然とは思えない“つながり”のある3人が、東京選手権の1~3位をステップに、アジア大会代表を狙っていく。

執筆者】 : 寺田辰朗          【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB