藤井菜々子が女子競歩初のメダルを獲得。「本気でメダルを狙って歩きました」
東京2025世界陸上が9月13~21日、国立競技場を中心に開催された。東京陸協登録選手は24人(補欠代表選手を含めると26人)が選ばれ、国立競技場に毎日登場し、大歓声のなかで走り、跳び、投げた。その中から3選手を取り上げて紹介する。1人目は女子20kmWの藤井菜々子(エディオン)で、日本女子競歩初のメダル(銅メダル)を、1時間26分18秒の日本新記録で獲得した。日本の陸上競技史に残る活躍だった。
「本気でメダルを狙って歩いて、思い描いていたレースができたのでもう、大感激です。日本の競歩は男子が(15年北京世界陸上以降)ずっとメダルを取り続けてきているのに、女子は弱いと外国人選手からも言われてきて、『私が必ずメダルを取る』と思って練習してきました。次への大きな一歩を踏み出せたのかな、と思います」
銅メダルを獲得して少し時間は経っていたが、藤井は興奮冷めやらぬ様子で話した。
藤井は過去の世界陸上で2度、入賞している。19年ドーハ大会では7位だったが、8学年先輩の岡田久美子(ビックカメラ。現富士通)が6位に入り、当時20歳の藤井はその背中を追って入賞を果たした。岡田からはトレーニングだけでなく、日常生活や競技に取り組む姿勢など、多くのものを学んだ。
22年オレゴン大会は6位。前年の東京五輪で、国際大会では初めて岡田に先着し(13位と15位)、オレゴンでは09年ベルリン大会の渕瀬真寿美(大塚製薬。現建装工業)、19年ドーハ大会の岡田と並ぶ女子競歩最高順位を記録した。
しかし昨年のパリ五輪は、故障の影響で歩型が崩れていた時期で、3回の警告を出されてペナルティゾーン入り。2分の待機を強いられ、32位に終わった。それから歩型も見直し、今大会では16~17kmで2枚目の警告を出されたが、カーブも使って力の入れ方を修正した。フィニッシュ前まで審判にしっかり見られたが、3枚目の警告は出なかった。
その最後の直線では4位のP.トレス(エクアドル)に同タイムまで追い込まれた。「メダルへの強い思いでここまでやってきたので、その気持ちで逃げ切ることができました」
フィニッシュしてその場で銅メダルを受け取ると、18位でフィニッシュした岡田の首にそのメダルをかけて、自身を成長させてくれた先輩に感謝の気持ちを伝えた。
日本競歩の世界大会入賞第1号が、91年世界陸上男子50km競歩の今村文男(富士通)の7位だった。同じ東京で女子競歩の歴史の扉が開いた。
【執筆者】 : 寺田辰朗 【執筆者のWEBサイト】 : 寺田的陸上競技WEB
